旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ - 福本次郎

ゴリラの恋やチンパンジー夫婦の思いやりなど、あたりまえのようで今まで知らなかった動物の生態をカメラは根気よくとらえ、命の尊さを教える。単に成功物語に留まらず、動物の気持ちを理解しようとする映画の姿勢がすばらしい。(60点)

旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ

© 2009『旭山動物園物語』製作委員会

 飼育員に恋をしたメスゴリラが担当が替わったとたんに衰弱死したり、妊娠中毒で食餌制限中のチンパンジーの手をオスが握り締めてやったりと、類人猿とはかくも濃やかな愛情を持っているのか。親が子を世話をするという本能ではなく、相手を一個のパーソナリティとして愛している。あたりまえのようで今まで知らなかった生き物の生態をカメラは根気よくとらえ、人間たちに命の尊さを教える。単に有名動物園の成功物語に留まらず、動物たちの気持ちを理解しようとする映画の姿勢がすばらしい。

 旭山動物園に吉田という青年が飼育係として就職するが、動物園の客足は遠のき寂れるばかり。園長の発案で冬季や夜間の開園、飼育係による動物の解説などを取り入れるが入場者数は上向かず、市議会で廃園が議題に上がる。

 ジェットコースターや観覧車といった目先の目新しさで話題を提供するのではなく、動き回る動物を見せることにアイデアを絞り、来園者の興味を刺激する。もはや崖っぷちに立ち失うものがなくなったときの人間の開き直りの強さ。園長はさまざまなアイデアを出し、予算を引き出すために市議会や市長に懸命にプレゼンする。一方で飼育員たちのやる気を出させ、どうすれば動物たちを生き生きと見せられるかを検討する。頑固職人のようなベテラン飼育係を束ねる人情だけでなく、大胆な行動力を持つこの園長はまさしく西田敏行のはまり役。先頭に立って引っ張るというより底辺から全体を押し上げるようなタイプの管理職をソツなく演じている。

 やがて新市長の後押しの下、「行動展示」に軸足を移した動物園はペンギンが頭上を泳ぐような水族館で人気を得る。その過程で、園長の視線は家族的な経営から観客を意識した経営に変わっていくのだが、そんなやり方に反発して辞めた従業員もいたはず。それが絵本作家になった1人だけというのは少しできすぎではないだろうか。そのあたりもう少し人間的な葛藤も描いて欲しかった。

福本次郎

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