物語があまりに突飛で矛盾が多い(50点)
仏映画らしい耽美系恋愛劇だが、かなりのキワモノだ。神話や土着の信仰が混在する5世紀のフランスで、羊飼いの美少女アストレは、嫉妬のあまり恋人セラドンを疑い一方的に別れを告げる。絶望したセラドンは「二度と姿を見せないで」との彼女の言葉に従い続ける。いくら古い時代の恋愛劇とはいえ、物語があまりに突飛で矛盾が多い。強引な女装や、愛とは?の激論に、唖然とするやら可笑しいやら。ロメールは、歌や大仰なセリフなどでリアリティを無視した美学を貫いている。仏では「あいつはセラドン」と言えば、女のいいなりになる男との嘲笑の意味らしいが、その理由がバッチリ理解できる珍作だ。ただ役者は皆、浮世離れした美しさで、目の保養にはいい。
(渡まち子)