守護天使 - 福本次郎

命を懸けて守りたいもの、それは家族でもプライドでもなく見知らぬ女子高生。家では鬼嫁に虐げられ、会社は薄給、唯一見出した希望が彼女を見守ること。主人公の冴えない日常が、リアルな中にもほのかな笑いと共感を誘う。(60点)

守護天使

© 2009『守護天使』製作委員会

 命を懸けて守りたいもの、それは家族でもプライドでもなく見知らぬ女子高生。家では鬼嫁に虐げられ、満員電車に揺られて出勤する会社は仕事の割に薄給、唯一見出した希望が彼女を見守ること。カンニング竹山扮する主人公が送る冴えない日常、何をやってもうまくいかずまわりに怯えながら生きている姿が、リアルな中にもほのかな笑いを織り込んで共感を誘う。そんな男が得体の知れない悪と対峙したとき、ありったけの勇気で体当たりする。「生きるってみっともないけど、それでいい」という少年のセリフは彼にとっては最高のホメ言葉なのだ。

 駅で転んだ須賀は優しく声をかけてくれた涼子に恋をする。だが、引きこもり少年の大和が涼子のブログを発見、そこでは「淫乱女高生」が乱交相手を募集していた。須賀は友人の村岡、大和と共に涼子の正体を調査するうちに、彼女を危険から守る決意をする。

 おそらくいままで、重要な決断を何も自分で下さないまま過ごしてきたのだろう。しかし、須賀は涼子への気持ちが「初恋」と言い切り、その思いに殉じることに自らの生まれてきた価値を見出す。彼の行動力は40年の人生で堆積したエネルギーが爆発するかのよう。涼子の身辺を探るために家を出て会社を辞め、ホモ雑誌のモデルで活動資金を作るだけでなく、拉致された涼子を救出するために決死の覚悟で連続殺人鬼のもとに乗り込む。確固たる目標を持ったとき、人間は強くなれるということを須賀は身をもって証明する。

 警察での取調べを終えた須賀が玄関前でマスコミに取り囲まれるシーンに、意思を持つ男の美しさが凝縮されていた。須賀をバカにしていた鬼嫁が、体を張ってストーカー呼ばわりするレポーターから須賀をかばうのだ。家出してまで涼子を救おうとした夫に鬼嫁が惚れ直したという構図。須賀の初恋の相手は涼子だったとしても、二度目の、そして本当の恋の相手はこの鬼嫁になりそうな予感を抱かせるラストシーンがさわやかだった。

福本次郎

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