映画冒頭からすさまじい記録写真が登場してギョッとする(70点)
題名から想像するのは辛亥革命を成し遂げた孫文の、政治色が強い伝記映画。だが実際は、マレーシアのペナンに身を潜めた時期に、彼を支えた女性チェン・ツイフェンとのラブ・ストーリーに近い。同時に、孫文に影響を受けて成長する若い女性とそのフィアンセの運命も描いていく。1910年、9度目の武装決起に失敗した孫文は、ペナンで華人富豪らに革命資金寄付を訴える。だが彼の背後には、常に清国の暗殺者の影があった。
ウィンストン・チャオは「宋家の三姉妹」でも孫文を演じているが、本作は宋慶齢との結婚より前の話。ペナン滞在期は孫文を語る時、歴史の表舞台にはほとんど登場しない。映画は史実そのままである必要はないし、伝記映画では主人公の一生をすべて描く必要もない。どこをどのように抽出するかが作り手の腕の見せ所だが、本作の個性は、華々しい革命成功ではなく、悩み多き革命前夜に焦点を当てたことだ。映画冒頭から、すさまじい記録写真が登場してギョッとする。革命に理想は必要だが、仲間の犠牲や資金調達に翻弄される日々の中ではモチベーションを保つことが最も難しいことだと分かる。孫文には心の支えになる女性がいた。彼女がいう「あなたは私を愛した。でもその前に革命を愛してしまった」という言葉が二人の運命を象徴していた。映画の漢字タイトルが出る映像が非常に美しいので、注目してほしい。
(渡まち子)