冬山の厳しい美しさと同時に色鮮やかな緑や紅葉の木々が素晴らしい(70点)
日本地図誕生にこんな秘話があったとは。明治40年、未踏峰の劔岳山頂を目指す測量手と山の案内人がいた。軍部が、日本山岳会への強いライバル意識をあらわにする中、命がけで地図作りに挑んだ男たちの気骨に胸を打たれる。名カメラマン木村大作の初監督作だが、圧巻なのは、CGや空撮を使わずに撮影した本物嗜好の映像。冬山の厳しい美しさと同時に色鮮やかな緑や紅葉の木々が素晴らしい。クラシック中心の音楽が荘厳すぎて少々重苦しいのが惜しいが、それを緩和するのが飄々としながらも軽くならない浅野忠信の存在感だ。ラストには意外な展開が用意され聖なる山のイメージを新たにする。長期にわたる危険な撮影ではスタッフに怪我人も出たと聞く。地図作りと同じくらい、この映画製作の労をもねぎらいたい。
(渡まち子)