副王家の一族 - 福本次郎

◆「憎悪こそ生きる秘訣だ」。19世紀シチリア、封建的領主親子が革命の嵐に飲み込まれながらも、権力の座を守っていく過程で、壮絶な家族の葛藤が繰り広げられる。その語り口はあくまで重厚で、貴族社会の息苦しさを実感させる。(60点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 「憎悪こそ生きる秘訣だ」。権力に憑りつかれ、他人を思いのままに動かすことができる快感を手に入れるためには、男はあらゆるものを憎み、蹴落としていく。それがたとえ親子兄弟の間柄であっても、反抗するものには容赦はしない。19世紀シチリア、封建的領主親子が革命の嵐に飲み込まれながらも巧みに生き抜き、権力の座を守っていく過程で、壮絶な家族の葛藤が繰り広げられる。その語り口はあくまで重厚で、個人の愛や思想よりも一族の安泰を優先する屋敷の中では、笑顔よりも怒り、喜びよりも苦悩、希望よりもあきらめが蔓延し、貴族社会の息苦しさを実感させる。

 副王の血を引く名門貴族・ウセダ家は、当主のジャコモが一家のすべてを支配していた。幼少時からそんな父から厳しい教育を受けてきた長男のコンサルヴォは、父と激しく反目、不幸をもたらす存在として修道院に入れられる。やがて革命がおこり、封建制は打倒される。

 ジャコモはただ頑固なだけの守旧派のようだが、一方で時代の風を読む能力に長けている。妹と弁護士の仲を「平民とは結婚させない」と一度は反対しながらも、弁護士が新体制で市長になると態度を一転、賛成する。さらに左翼系市民が力を蓄え始めると、今度はコンサルヴォを市長の対立候補に立てる始末。この辺りの権謀術数は、盛衰激しい小国の寄せ集めであったイタリアでサバイバルしてきたジャコモの真骨頂だ。映画は終始コンサルヴォの視点で語られるため、ジャコモは暴君のように描かれているが、ウセダ家が革命後も没落せずに済んだのはジャコモのおかげなのは間違いない。

 後に、市長になったコンサルヴォは、ジャコモの死でウセダ家を正式に継承する。大衆に取り入り、一見人のよさそうな政治家に見えるコンサルヴォだが、その実、ふとした瞬間に見せる狡猾な表情が、彼もまた権力の虜になってしまったことを物語る。おそらくジャコモを見習った政治手腕を発揮したのだろう、のちにローマの国会に出席するまでになり、ジャコモ以上の権勢を握る。その資質は確実にジャコモから受け継いだものであることが、見事な皮肉となって効いていた。

福本次郎

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