人間失格 - 渡まち子

◆ほとんど孫と祖母くらいの年齢差の三田佳子が生田斗真に後ろから迫る図はあまりに異様で、見ているこっちが怖くなった(50点)

 太宰治の自伝的小説の映画化で、主人公を取り巻く女優たちが豪華だ。青森有数の資産家の息子の大庭葉蔵は、人間というものが判らない感覚に苛まされていた。幼い頃はわざと道化を演じ、大人になって上京してからは、画塾の友人で遊び人の堀木らと酒や女に溺れる放蕩の日々を送る。挙句の果てに生きることに疲れ、精神的に追いつめられた葉蔵は、カフェの女給・常子と心中するが、自分だけ生き残ってしまう…。

 文豪・太宰治の作品の中で、最も有名なものがこの「人間失格」で、太宰の遺言のような物語だ。過剰なまでの自意識ゆえに破滅していく主人公・葉蔵を、レトロで幻想的な映像で描ききる。葉蔵を演じる生田斗真は、これが映画初出演で初主演。美形だが何とも印象が薄いのは、周囲の女優たちがあまりに強烈な印象を残すからだろう。だが、この存在感のなさは、生涯を通して受け身のまま堕ちていく葉蔵というキャラクターには適しているように思う。寺島しのぶや小池栄子、石原さとみなど、タイプの違う女優たちが次々に登場して華やかだが、終盤になるに連れて女優の年齢が急上昇。葉蔵の“最後の女”の役割を果たす大女優の三田佳子とのからみなどは、いささか常軌を逸している。ほとんど孫と祖母くらいの年齢差の三田佳子が生田斗真に後ろから迫る図はあまりに異様で、見ているこっちが怖くなった。物語はほとんど原作に忠実だが、映画オリジナルのキャラクターとして中原中也が登場する。夭折の天才詩人が、トンネルの中で見せる幻想的な空間は、ナイーブすぎて世の中になじめない葉蔵の現実逃避とも重なる印象的なシーンだった。葉蔵の正体を見破る友人に見せる「おばけ」の絵が、主人公の人生の通奏低音。生まれてすみませんと恥じ入る太宰は、今も当てのない旅を続けているような気がする。語り部で「青い花」のマダム役の大楠道代が出色だ。

渡まち子

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