不撓不屈 - 前田有一

不当な権力に戦いを挑んだ勇気ある男の物語(65点)

 『不撓不屈』は、国税庁の嫌がらせに正面から立ち向かった実在の税理士、飯塚毅を描いた社会派ドラマだ。飯塚事件として知られるこの出来事は、高杉良の原作にもあるとおり、昭和38年から45年まで続いた裁判と国会闘争のこと。

 主人公の税理士飯塚(滝田栄)は、中小企業の経営者に合法的な節税法を教授していたが、税務署に目をつけられ、様々な警告を受けるようになる。しかし正義感が強く、理不尽な権力の圧力に屈しない飯塚をみて、税務当局はその顧客企業を狙うようになる。

 嫌がらせめいた税務調査は零細商店にまでおよび、飯塚事務所の収入源は徐々に切り崩されていく。そんな国税庁に対し、ついに彼は正面から立ち向かう決意をする。そしてその瞬間から、飯塚の孤独で壮絶な闘いの日々が始まった。

 前半は、これでもかというくらい、国税庁のいやらしさを強調した演出。数々の嫌がらせのやり口は、見ているだけで嫌悪感を抱くほど腹立たしいものだ。これに対して、滝田栄演じる主人公の飯塚は、見るからに好感度の高い誠実な紳士として扱われ、わかりやすいヒーローとして観客の心をつかむ。権力の横暴に立ち向かう男を賛美する映画の出だしとしては、ほぼ完璧だ。

 国とケンカするなど、誰がどう見ても暴挙であり、恩師や周りの心有る人々もそろって反対する。しかし彼は信念の人であり、いち庶民である顧客企業や事務所の従業員たちの正義を守るため、立ち上がる。

 彼はマスコミからもたたかれ、四面楚歌に陥るが、そんな彼を支えつづける家族の姿が感動的。涙を誘う名場面もいくつかある。

 やがて現れる協力者が面白い。野党である社会党の代議士(これがまた実にリアル。こういう性格の代議士は実際にたくさんいる)や、匿名の国税庁職員など、裏から表からの協力によって、絶対不利といわれた闘いは、やがて一進一退の攻防となる。このあたりのサスペンスフルな展開はうまい。はたしてこの結末はいかなるものか。

 『不撓不屈』は、前半90点、後半40点といった感じの映画だ。先ほど書いたように、前半の熱い展開は心を揺さぶるものがあり、強い感動を与えてくれる。しかし、後半になると安易にお涙頂戴に走り、せっかく重厚で慎重だった展開の面白さも失われてしまう。また、クライマックスにはもう少々カタルシスがほしかったのだが、そのあたりも惜しいところ。

 ただし、それでもこの映画には、60?70年代の日本人が持っていた"美しいもの"がいくつも描かれている。そうしたものを感じ取れるだけでもすばらしい映画だから、中年以上の方は、暇があったらぜひご覧になってほしいと思う。

前田有一

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