レイン・フォール/雨の牙 - 福本次郎

凄腕の暗殺者が女と逃亡する「ボーン・アイデンティ」さながらの展開だが、主人公を演じた椎名桔平は明らかにアクションの訓練を積んでおらず、この役に不適格。短いカットで格闘シーンをごまかし、安っぽい印象しか残らない。(30点)

レイン・フォール/雨の牙

 凄腕の暗殺者が契約を実行するが、警察のみならずCIA、ヤクザにまで追われる。東京の、あらゆるところに設置された監視カメラが人々を記録していく中、彼の行動はすべて筒抜け、しかし、逆にそれを利用して相手をかく乱する。物語は事件に巻き込まれた女とともに姿を隠しつつ反撃の機会をうかがうという「ボーン・アイデンティ」さながらの展開を見せるが、主人公を演じた椎名桔平は明らかにアクションの訓練を積んでおらず、この役に不適格。短いカットで格闘シーンをごまかそうとするが、安っぽい印象しか残らない。

 大規模な汚職を告発しようとした国土交通省の役人・川村がレインという男に電車内で暗殺される。汚職の証拠となるメモリーをCIAのホルツァーが手に入れようとし、レインはCIAから追われる羽目になる。その途中、川村の娘・みどりを保護し共に逃げる。

 確かに都心部の繁華街や駅などにはいたるところにモニターが設置されているが、ちょっとした路地裏や住宅地に入ればそう簡単に映されることはあるまい。レインもそれを知っていながらなぜモニターのない道を選んだり変装しないのか。大体、CIAはハイテクに頼りすぎで、モニターを見ているだけでなく、レインを尾行するなどもっとマンパワーを投入すべきだろう。レインの前に現れるヤクザのほうが人探しという点ではよほど優秀に見える。

 その後レインは、川村が電車に乗る前に立ち寄った八百屋の陳列棚からメモリーを回収するが、なぜ八百屋と分ったのか。八百屋のほうも普通に店を管理していたらメモリーの存在に気付くはず。その後も、余りにもばかげた追跡が繰り広げられたのち、レインはCIAのオフィスに忍び込む。情報機関のセキュリティがこれほど甘いはずはなく、ここでもこの作品のご都合主義が表面化する。そして極めつけは10分以上もあるエピローグ。やたら椎名桔平と長谷川京子のアップが多く、ただただ退屈なだけの蛇足。シャープな映像の映画ではあるが、まったく内容が伴っていなかった。

福本次郎

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