◆裏切りと嘘、ハッタリと罠、欲の皮が張った男女が綾なす壮絶な心理バトルがスリリング。参加者の行動を予測し、心の動きを解説する主人公はクールかつニヒルで、人間の本質を突く彼の考察は一般論としても十分に楽しめる。(40点)
裏切りと嘘、ハッタリと罠、欲の皮が張った男女が綾なす壮絶な心理バトルが非常にスリリングだ。誰が味方で誰が敵か、寝返った者が次のステージではまた協力し、どんでん返しの先にある二重の仕掛けが見る者をひきつける。しかし、繰り返されるアップや短いカットの多用とわざとらしく観客の注意を喚起させる大げさな効果音、さらに後半はくどくどとした説明に大半の時間が費やされ、徐々にその安っぽい展開に飽きてくる。もはやCMによる中断のないテレビドラマの拡大版でしかなく、わざわざ映画にして劇場公開する意味が見えてこない。そういえばスクリーンの縦横比率もテレビと同じくらい、もしかして1年も経たないうちにTV地上波で放映されるのではないだろうか。
バカ正直な女子大生・直はライアーゲームに招待され50億円争奪戦に加わる。参加者11名中信頼できるのは天才詐欺師の秋山のみ、そんな中、全員が力を合わせれば皆大金を受け取れるというゲームが始まる。
金銀赤のリンゴのうち、すべての参加者が赤に投票すれば全員が儲けられるというルールなのに、当然抜け駆けして独り勝ちを狙うやつが出る。参加者の性格を冷静に観察し、行動を予測し、心の動きについて解説を加える秋山のキャラはここでもクールでニヒル。人間の本質を突く彼の考察は一般論としても十分に楽しめる。だが、物語が進むにつれ、伏線が張られているわけでもない彼が仕掛けたトラップの数々は後付けのこじつけにしか見えず、また、正体を看破された参加者がいちいち懺悔するかのごとく告白をするのにも鼻白む。
結局、この言葉による能書きの過剰さのせいで、どういうトリックで票が操作されたかといったカラクリを推理する余地や、登場人物の感情を想像するといった余韻を与えず、マニュアルを読んでいるような味気なさしか残さない。まあ、わかりやすさを求めているテレビドラマの視聴者にはありがたいのかもしれないが。。。
(福本次郎)