モリエール、恋こそ喜劇 - 福本次郎

◆若き日のモリエールが、喜劇とは何かを模索し、実践する決意を実行するまでを描く。豊かな暮らしの中で暇を持て余した人々が走るものはいつの時代でも恋。相手の美しさを称え愛を語るうちに言葉が洗練されていく過程が楽しい。(50点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 人間を観察し、そのクセや特徴をつかむ。誰もが他人に抱いているかすかな感情を刺激し、リアリティを持たせつつ笑いに昇華させる。大衆演劇でウケるのは、観客にとって「こんな人いるよね」というような共感を持てるキャラクターで、そのディテールを誇張することで琴線に触れる役者。映画は後に劇作家として歴史に名を残したモリエールが、喜劇とは何かを模索し、実践する決意を実行するまでを描く。豊かな暮らしの中で暇を持て余した人々が走るもの、それはいつの時代でも恋。相手の美しさを称え愛を語るうちに、言葉が洗練されていく過程が楽しい。

 貧乏劇団の劇作家兼俳優のモリエールは、成り金商人ジュルダンに借金の肩代わりさせる代わりに、芝居の指導を頼まれる。それはセリメーヌという侯爵夫人への思いを寸劇にしたものだった。

 早速モリエールはジュルダンのもとに招かれるが、そこはまるで宮殿のような立派な建物と手入れの生き届いた広い庭のある屋敷。たまたま書いた脚本をジュルダンの妻・エルミールが目にしたのをきっかけに、ふたりの距離が縮まる。演劇に興味があり、かつ退屈を持て余していた彼女はたちまちモリエールの虜になる。このあたり、恋愛の対象になる者がいればすかさず積極的にアプローチするというフランス人の気質がいかんなく発揮される。

 モリエールが馬の模写をするシーンで演劇の真髄をみせる。ただその仕種やいななきをまねるのではなく、馬そのものの気持ちになって、さまざまな種類の馬を演じ分けるのだ。その他にも、そこにいない人を舌鋒鋭く切って捨てるセリメーヌの毒舌は後味が悪いのに対し、モリエールがデフォルメするものまねはどこか温かみがあるのだ。日常生活にネタを求めるならば、笑い飛ばしつつも愛すべき点を残す。それがネタにされた人に対する礼儀だろう。そこをきちんと理解していたからこそ、モリエールは稀代の劇作家となりえたのだ。物語は、モリエールの伝記にない空白の期間を埋めるフィクションだが、付文による愛の交歓や、人件費の安いスペインや中国といった、遊び心のあるエスプリが効いていた。

福本次郎

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