どれも描写は中途半端(40点)
「吊る」という行為は「ザ・セル」でも意味深く使われていたが、サイコ・サスペンスである本作でも、サディスティックな“吊り”の残酷度は相当なものだ。ベテラン刑事ブレスリンは、猟奇的な連続殺人事件を担当することになる。極太のフックで不気味な器具に吊るされた異様な姿の遺体からは大量の血が流され、現場には「COME AND SEE(来たれ)」というメッセージが残されていた。そんな中、犠牲者の養女であるクリスティンが衝撃的な告白と共に自首するが、事件はまだ終わらないという彼女の言葉の通り、さらなる惨劇が起こってしまう。
「羊たちの沈黙」の獄中の殺人鬼、「セブン」の聖書系連続殺人、「ソウ」の残酷描写。これらをブレンドすれば、本作の出来上がりだ。ホースメンとはヨハネの黙示録に登場し、世界に暗黒をもたらすとされる、赤、黒、緑、白の4人の騎士のこと。この四騎士をモチーフにした拷問殺人の手口は、見るだけで痛みが伝わってきそうで思わず目をそむけたくなる。だが、「羊たちの沈黙」のレクター博士に備わっていた、芸術にまで達した殺人を行なう技量、教養、美意識が、この物語の犯人にさっぱり感じられないのだ。謎のWEBサイトや複数で行なう計画殺人、不幸な家庭環境など、どれも描写は中途半端。リーダーの正体も物語半ばであっさり読めてしまうし、ラストも極めて甘いもので納得できない。ただ、殺人の動機を顧みると、虐待や差別などが深刻なアメリカの現状がうかがえる。見所は、意外性のあるキャスティングで、善良な父親のイメージのデニス・クエイドが家庭を顧みない孤独な刑事、いくつになっても可憐な少女のようなルックスのチャン・ツィイーが殺人鬼というもの。これは見ものだ。
(渡まち子)