ホステル2 - 福本次郎

◆街外れの廃工場で若者を切り刻む組織は、米国人の古いヨーロッパに対する憧憬の裏返し。しかし、その組織には、先人から粛々と伝授されてきた拷問や処刑法に対する敬意がなく、拝金主義に毒されていく東欧の末路を見るようだ。(50点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 街外れの廃工場で拉致してきた若者を切り刻むという人殺しを楽しむための組織・エリートハンティングは、米国人の古いヨーロッパに対する憧憬の裏返しだ。発展途上国に対する優越感を持ちながらも、数千年の伝統の中で培われた未知の部分に恐れを抱いている。大鎌を持った全裸の中年女が逆さ吊りにした犠牲者を切り刻みながらその血を浴びて恍惚となるシーンは、死神や魔女といった欧州における暗黒の歴史の強烈なメタファーとなり、米国人の恐怖をかき立てるのだろう。泣き叫ぶ者に拷問具で苦痛を与え、さんざんもてあそんだ上に殺すという異常な心理ゲームに、理性を超えた戦きを覚えるのだ。

 ローマで美術を学ぶ女学生3人組がスロバキアの温泉地にバカンスに出かける。そこは殺人工場の街、友人がひとりまたひとりと姿を消すなか、大金持ちのベスも正体不明の男たちに追われる身となる。

 前作と男女を入れ替えただけの同じ設定にするのではなく、今回はエリートハンティングの組織と運営方法を詳細に描く。ホステルにチェックインした客のパスポートをスキャンし、世界中のメンバーにオークションにかける一方、落札者は刻印を入れた上に必ず殺すことを約束させられる。要するにカネさえあれば参加でき、金持ちほどいい獲物を殺す権利を得られるという、きわめて資本主義的な方法。もっと秘密結社めいた参加資格とイニシエーションが必要なのかと思ったが、こういうところはいかにも米国流で興ざめだ。

 前作では同じ言語を理解するもの同士をマッチングしないはずだったのに、米国人がベスを落札。しかしその男は怖気づき、逆にベスに囚われる。そこでベスは破格の値段でその男を落札した上で殺すという、組織の運営を逆手に取った方法で窮地を脱する。組織のボスもビジネスと割り切りそれでよしとする。そこには、たとえ負の遺産とはいえ、先人から粛々と伝授されてきた拷問や処刑法に対する敬意がまったくなく、拝金主義に毒されていく東欧の末路を見るようだった。

福本次郎

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