◆ビートの効いた映像と音楽、息もつかせぬ展開。頭脳と行動力だけで駆け巡る若者たちの息遣いと、大金を複数の非合法組織が血眼で争う様子がテンポよく描かれる。また、多岐にわたる人物描写が丁寧で、混乱せずに見ていられる。(70点)
ビートの効いた映像と音楽、息もつかせぬ展開。頭脳と行動力だけで渋谷の街を駆け巡る若者たちの息遣いと、カネを巡る複数の非合法組織が血眼で争う様子がテンポよく描かれる。思わぬ大金を手に入れた若者グループとそれを狙う4組の大人たち。仲間しか信じられない状況でどんどん追い詰められ、最後に大芝居を打つあたりは上質のコンゲームの趣もあり、その成り行きに目が離せない。また、登場人物がこれだけ多岐にわたるのに人物描写が丁寧で、混乱せずに見ていられる。
渋谷を仕切る若者グループのメンバーが強盗団からバッグを奪うが、そこには3000万を超える大金が入っていた。それは関西ヤクザが仕切る地下カジノから強奪された売上金の一部。グループのリーダー・アキはそのバッグを返そうとするが、情報を聞きつけた強盗団、企業舎弟、関西ヤクザ、ブラジル人マフィアが争奪戦を繰り広げる。
いかにも渋谷系という若者と、スタイリッシュな強盗団、アクの強い関西ヤクザ、強欲な企業舎弟、謎のブラジル人。それぞれのグループの特徴が非常に分かりやすく色分けされているうえ、仲間を裏切るようなことはしないのでストーリーが必要以上に入り組まない。伏線を張ることで観客を後戻りさせるのではなく、ひたすら前に進もうというパワーが非常に強く感じられ、映画の疾走感は加速する。
追い詰められたアキたちは、逃げることをやめて反撃に出る。自分自身を餌に企業舎弟の事務所に強盗団と関西ヤクザをおびき寄せ、漁夫の利を得ようとするのだ。このシーン、「トゥルー・ロマンス」の剽窃で感心しない。また、カネが入ったバッグにまつわる人間関係も、あまりにデキすぎ。仕組まれた必然ではなく、これほど偶然が重なるのはご都合主義丸出しだ。だいたいバッグには、3000万もの大金が入っているのだ。知っているならばきちんと確認するだろうし、知らなくても中身の違いくらい持った感触で分かるはず。このあたりもう少し知恵を絞って欲しかった。
(福本次郎)