パラノーマル・アクティビティ - 福本次郎

◆音はするが姿は見えない。気配は感じるが実体はない。邪悪な空気は小さな物音から始まり、ドアを動かし、ついには就寝中のベッドに侵入する。その得体の知れない存在に神経をさいなまれていく主人公ふたりの葛藤が生々しい。(50点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 音はするけれど姿は見えない。気配は感じるのに実体はつかめない。霊感の強い女が日々悩まされる未知なるものからのコンタクト。「それ」は邪悪な空気を振りまきながら、最初は小さな物音から始まり、やがてドアを動かし、窓を開け、ついには就寝中のベッドにまで侵入する。その得体の知れない存在に神経をさいなまれていく主人公の葛藤が生々しい。映画は、恋人の身に起きる超常現象を記録しようとする男のカメラがとらえた映像を通じて、常識の範疇を超えた恐怖に追い詰められていく感情の昂りをリアルに再現する。

 子供のころから心霊体験を持つケイティは同棲中のミカに不調を訴える。ミカは家じゅうにビデオカメラを設置して、自分たちが眠っている間の出来事を検証する。家具がゴトリと動く程度だったのが、毎夜カメラを回すうちにエスカレートし、何かが彼らの寝室に忍び込んでくる。

 ビデオカメラで撮影されたモノクロ映像と、手持ちカメラによるミカの主観を巧みに編集したセミドキュメンタリータッチの映像は、ふたりの心に生じる戸惑い、恐れ、怒りを観客にも共有させる。特に「それ」がなんらかの物理的な作用をもたらすと分かったとき、ミカがパウダーを床にまくが、人間のものとは思えない足跡が残る場面は、何も映っていないだけにかえって緊張を盛り上げる。さらにふたりが眠っているベッドでシーツが持ち上がり、ケイティの枕元で見下ろしているかのように見えるシーンは思わず背筋が凍りつく。見せないことで想像力を刺激し、忌まわしいことが起きていると感じさせる演出は秀逸だ。

 悪魔払いを呼んでも断られ、ウィジャーボードによる交信もできない。唯一ミカがネットの記事から過去の同様の事例を発見する。しかし、具体的な対応策は何もなく、ケイティには悲惨な結末が待ち受けていることだけを知る。逃げ場のない絶望と諦めの空気が漂う中、なんとか解決策を見つけようとするミカ。そんな彼らを最期まで淡々と見つめるレンズが、映画を見る者のすぐそばにも「それ」がいるような不気味さを味あわせてくれる。

福本次郎

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