ネブラスカ/ふたつの心をつなぐ旅 - 青森 学

アメリカンドリームの影に隠れた、その他大勢の人たちのかけがえのない物語(点数 88点)


(C) 2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

アカデミー賞主要6部門ノミネートの本作だが、それだけ評価されていることもあって、飄々としたおかしみのなかにじんわりとした感動が伝わる親子の絆を描いたロードムービーだ。

90年代半ばに『フォレスト・ガンプ』が世間でもてはやされた時は時の運によって誰でもチャンスを掴むことが出来ることを描いたおとぎ話しだったが、 2000年代になると再び夢を見るだけでなく、むしろ夢から覚めて現実をシニカルに見つめるような少し醒めた視線と諦観のある作品が受け入れられるようになってきたと思う。アメリカは数々の痛みを経験して生涯を賭けても得られないもの、達成できないものについて光りを当て続けている。
それは『真夜中のカーボーイ』にみられるニューシネマから連綿と続くもう一つの”アメリカ”である。

この『ネブラスカ』でも酒浸りで頑迷な父親(ブルース・ダーン)の「100万ドルの宝くじが当たった」という妄言を信じないで一喝して否定するのではなく親父の気が済むまで付き合う性根の優しい次男(ウィル・フォーテ)が実にナイス。
アメリカンドリームを捨てきれない旧世代の男とアメリカの現実を知ってしまった新世代の男との温度差が微温的な笑いを醸し出す。
父子は賞金を受け取るためにアメリカ中央部に位置するモンタナ州からネブラスカ州の州都リンカーンまでの1500キロをクルマで走破するのだが、道中で映し出される荒涼した風景は夢から覚めたアメリカの虚飾のないリアルな現実である。彼らの心を占めている大半のものはこの索漠とした風景なのだ。

諦めのなかにいたわりを、優しさを織り込めた本作はアメリカンドリームを追うだけでなく、その夢を掴めなかった人たちの慰めについても言及している。
本作は夢を諦めきれない人への魂のサルベージなのである。

ビタースウィートな結末だが見方によればとってもスウィート。

世界のなかでも最もうつくしい魂のひとつが織り込められている。

賢者の贈り物のような愚かだけど愛しくて思いがけないプレゼントの交歓である。
吉田松陰は「親思うこころにまさる親心」と辞世の句を詠んだが、古今東西我が子を思う気持ちは孝行息子が親を思う心より深くて大きいものなのである。

旅の途中で彼の賞金を狙う元同僚や強欲な親戚に邪魔されるが、そんな妨害を乗り越えて父子は賞金の引き渡し場所のリンカーンへ一路向かう。
途中で夫の愚行にぼやきつつも行動を共にする毒舌家の妻(ジューン・スキッブ)が参加して物語に彩りを添えている。

青森 学

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