ネコナデ - 福本次郎

面倒を見ていないと心配でたまらない、それでも会社があるので仕方なく離れなければならない。笑うことのなかった主人公が子猫に癒されていく過程を通じて、彼自身も気付いていなかった心の中の優しい部分が目覚めていく。(70点)

© 『ネコナデ』製作委員会

 己にも他人にも厳しく接してきた男が、小さな命と触れ合っているうちに今までの生き方を見つめなおす。人情に薄く平気で部下や同僚にクビを言い渡してきた男が少しずつ変わっていく様子がとても自然だ。面倒を見ていないと心配でたまらない、それでも会社があるので仕方なく離れなければならない。オフィスでも家庭でも腹の底から笑うことのなかった主人公がいつしか子猫に癒されていく過程を通じて、彼自身も気付いていなかった心の中の優しい部分が目覚めていく。

 ロボットメーカーの人事部長・鬼塚はリストラを任され、社員にクビを言い渡す毎日。一方で新入社員研修の担当もこなす。ある日、公園で捨てられた子猫を拾った鬼塚は、新入社員用アパートの余った一室でその子猫を飼い始める。

 やたらつぶらな瞳や愛らしい仕種を強調するのではなく、鬼塚のしかめっ面と対比させることで子猫のキュートさを引き出す演出は非常にスッキリしていて好感が持てる。そもそも猫好きではない鬼塚の視線で見ているので猫に対する先入観がない。騒動も子猫が巻き起このではなく、鬼塚が勝手に右往左往しているだけなのだ。子猫をかわいがるような人間であることを誰にも知られたくない、そんな妙なプライドが、本心を誰にも言えずに生きてきた鬼塚の孤独を端的に物語る。本当は人知れず胃薬を飲まなければならないほどストレスを感じているのに、つい頑張ってしまう企業戦士の姿が哀しいい。

 やがてリストラも研修も無事終わり、子猫の隠し部屋を引き払わなければならなくなり、鬼塚は辞表を出すと共に子猫を自宅で飼う決意をする。彼が初めて経験する根無し草の生活。仕事だけが人生ではない新しい生き方を探す決意をした鬼塚のすがすがしい表情が印象的だ。それは、子猫だって誰かに拾われたのだから自分にだってきっと拾ってくれる人がいるという、ポジティブな考え方ができるようになった鬼塚の明るい未来を暗示しているようだ。

福本次郎

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