拝金主義を痛烈に笑い飛ばす(70点)
木村祐一の長編初監督作は、キリリと締まった佳作だ。終戦直後、紙すき産業が盛んな村で、ニセ札作りが始まる。それは村ぐるみで挑んだ一大犯罪だった。完全分業で挑むニセ札作りは本格的かつ牧歌的。だがこれは単なる金儲けのためでない。終戦で激変した価値観の中、生きていかねばならない庶民は、建前だけの民主主義なんぞには頼れない。だが、市場リサーチのつめが少々甘かった。実話に基づくニセ札事件の物語は、拝金主義を痛烈に笑い飛ばすものだ。ナチスや旧日本軍の幹部が聞いたら怒られそうな、村の偽札作りだが、お金を「所詮ただの紙切れ」と言い切る教師かげ子の顔は誇りに満ちて美しい。倍賞美津子がさすがの名演だ。
(渡まち子)