◆3Dの効果は期待したほどではなかったが、魔物クラーケンが現われる場面はさすがに圧巻だ(60点)
1981年の同名冒険映画を3Dでリメイクした作品だが、主人公が戦うモチベーションに違いがあるのが興味深い。ギリシャ神話の神が君臨していた時代。神々の王ゼウスの子として生まれながら人間として育った青年ペルセウスは、神の怒りを買ったアルゴス国と国民が滅ぼされるのを防ぐため、冥界の王ハデスと彼の手下の猛獣クラーケンを倒す旅に出る。ペルセウスとその一行の前には多くの困難が待ち受けるが…。
ギリシャ神話の英雄ペルセウスの物語では、既出の映画「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」が記憶に新しい。なぜか父が違うのが気になるがゼウスの息子であるとするのが一般的。だが親に反抗的なのはどちらも一緒だ。ギリシャの神々は非常に人間臭く、好き嫌いは激しいし、嫉妬深くて好色、おまけにノリやすくキレやすい。そんな彼らがみかじめる天上と人間界には多くの魔物がいるのだが、ほとんどが神々のとばっちりで生まれた鬼っ子だ。その代表がペルセウスの物語に必ず登場する魔女メドゥーサ。本作では神の側にも非があるとするスタンスだが、主人公の守護神イオがメドゥーサに同情的な発言をするのがその証拠だ。
オリジナルのペルセウスは神の子であることをあっさりと受け入れ、美しい王女アンドロメダを救うために戦う。だが本作では、育ての親を死に追いやったゼウスへの怒りと父子の確執が、戦うモチベーションにつながっていく。神の子として生きろと迫る父に逆らい、定められた運命に反抗し、人間として生きると言い張るペルセウスなのだが、神々が絶妙のタイミングで与えてくれた戦闘グッズを使ってピンチを切り抜ける展開は、お釈迦様の手の上で暴れる孫悟空の如しだ。とはいえ、自ら運命を切り開こうと奮闘する姿こそ21世紀の英雄像でもある。3Dの効果は期待したほどではなかったが、魔物クラーケンが現われる場面はさすがに圧巻だ。何より、特撮の名手レイ・ハリーハウゼンへのオマージュが感じられるところに好感が持てる。
(渡まち子)