猶予を1週間とした展開がうまい(70点)
無慈悲な殺人事件、犯人の謎の要求、母の強い愛情。バラバラだったそれらすべてのパーツがパズルのようにはピタリと合ったとき、見えてくるのは、法律が人を裁く限界だ。ユ・ジヨンは勝率100パーセントを誇る凄腕の女性敏腕弁護士。彼女の8歳の娘ウニョンが誘拐されるが、犯人の要求は金銭ではなく極めて特殊なもの。それは娘を返してほしかったら、強姦と死体遺棄で有罪目前の被告チョン・チョルチンを無罪にしろというものだった。
まず猶予を1週間とした展開がうまい。時間との戦いはジリジリとした焦燥を生み、主人公と共に観客を翻弄する。誰が見ても有罪の被告を無罪にしろという要求に見え隠れするのは、真相を探ってほしいという無言の圧力だ。短い時間で調査を進めるうちに、事件の裏側に潜む薬物や政治家の思惑が見えてくるプロセスは、非常にスリリング。決定的な証拠がないまま裁判に臨んだジヨンが見せる弁護士としての手腕は見事なものだ。だが映画の本当の見せ場はこれから先にある。犯人とその真意が分かったその時、大切な家族の命を奪われたものが、法律に対して見せる底知れぬ不信と不満がくっきりと浮かび上がり背筋が凍った。韓国映画特有の過剰な流血描写は見ていて疲れるが、ラストに犯人が見せる悲しくて充足した表情を見ると、人の命を奪った者の償いと、法律のあり方を改めて考えさせられる。
(渡まち子)