何もかもが輝いて、未来はすべて自分のものと勝手に思い込むことができたあの頃に戻りたい。そんな主人公が若返り、再生していく過程を通じて、人生の素晴らしさは日常生活のさまざまな場面に埋もれていることを教えてくれる。(50点)
何もかもが輝いて、未来はすべて我がものと勝手に思い込むことができたあの頃に帰りたい。30代も半ばを過ぎると限界が見え始め、こんなはずじゃなかったとついつい過去の栄光にすがりたくなる。そんな男が若返り、その知識や経験を生かしてクールな別人になろうとするが、家族の本音に触れるうちに、冴えない生活の原因が自分にもあるのを発見していく。映画は主人公が再生していく過程を通じて、人生の素晴らしさは日常のさまざまな場面に埋もれていると教えてくれる。
妻に家を追い出され、会社もクビになってしまったマイクは、かつて高校バスケット部のスターだった時代を懐かしんでいると、不思議な老人が現れ願いをかなえてやるという。翌日目が覚めると17歳のころに戻っていて、子供たちが通う高校に再入学する。
記憶はそのままに、肉体だけがみずみずしいまでの生命力を取り戻している。クラスメートたちの性への過剰な関心を諌めたりする一方、得意のバスケットの能力を見せ付けたちまち注目の的。だが、マイクは天狗になったりせず、娘と息子の心配をする。このあたりマイクは若い外見にもかかわらず成熟した配慮を見せるのに対し、彼の親友でIT長者のネッドは立派なオヤジなのに精神的には子供。2人を対比させてお互いの足りない部分を補い合い、完全に理想的な人間などいないということを語る。
女はこれほどまで男の愛を試そうとするものなのか。妻のスカーは、高校時代にはマイクに妊娠した自分と大学進学という将来を天秤にかけさせ、結婚後もおそらく絶え間ない愛を求めていた。さらにマイクの正体を見抜いた後も同じシチュエーションで彼を試すのだ。違う選択をしていればおそらくマイクは田舎町でくすぶっているのではなく、大都会でリッチになっていただろう。それでもマイクはスカーを選ぶ。一方的にマイクに愛を求めるばかりでなく、どうしてこんなに深くスカーはマイクに愛されているのか、そのあたりの彼女の魅力をもう少し描いて欲しかった。
(福本次郎)