スマイル 聖夜の奇跡 - 福本次郎

◆努力と友情、初恋と死、そして勝利と成功。少年アイスホッケーチームの活躍を軸に、大人もまた人生に希望を見出していく。映画はさまざまな仕掛けで観客を楽しませようとするが、方向性がバラバラで全体としての統一感に欠ける。(40点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 努力と友情、初恋と死、そして勝利と成功。少年アイスホッケーチームの活躍を軸に、監督の奮闘やライバルチームとの葛藤を通じ、子供たちの成長だけでなく大人たちもまた人生に希望を見出していく。そしてクライマックスは、大合唱でばらばらだった人の心を歌うことでひとつにする。映画はサービス精神が旺盛で、さまざまな仕掛けで観客を楽しませようとするが、その方向性がバラバラなために全体としての統一感に欠ける。結果的にディテールがおろそかになり、「奇跡」という言葉の大安売りが作品から誠意を奪う。

 北海道の小学校に赴任してきた修平は恋人の静華にプロポーズするが、静華の父親が少年アイスホッケーチームの監督を引き受けることを条件に持ち出す。そのスマイラーズというチームは負け犬集団、修平は彼らに発破をかけ、勝つことの喜びを教えていく。

 陣内孝則が、かつて自分がトレンディドラマで演じたようなテンションの高い役柄を、森山未来扮する修平に期待したのが最大のミス。森山のタップダンスは非常に洗練されているのだが、それ以外の見得を切るような仕種やコミカルな場面での演技がイマイチノリが足りずコメディとして昇華されていない。もっとはじけなければこの役は無理だろう。また、チームのエース・昌也の事情や白血病の少女との交流など涙を誘うようなエピソードも用意してあるが、繊細な感情まで描けておらずむしろ蛇足。

 修平の的を射たアドバイスと猛特訓、新メンバーの加入などでスマイラーズは強くなり、ついに地区予選の決勝にまで進出する。しかし相手は4ユニットそろったエリート集団の強豪チーム。10人しかいないスマイラーズとは圧倒的な人的資源の差があり、これを奇跡や友情頼りで戦うのはあまりにも現実離れしすぎている。それでも最初から荒唐無稽な喜劇というお約束があればうなずけるのだが、中途半端な演出のスタンスでは消化不良にしかならない。なんでもありのごった煮が、共鳴することなく、素材のままで固まってしまったような違和感だけが残った。

福本次郎

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