スイートリトルライズ - 渡まち子

◆穏やかさの中にただならぬ気配がある作品だが、どこか空虚で共感できない話だ(45点)

 穏やかさの中にただならぬ気配がある作品だが、どこか空虚で共感できない話だ。IT会社勤務の聡と人気テディベア作家の瑠璃子は結婚3年目の夫婦。今も恋人同士のような二人はハタから見れば理想的だが、互いに心の距離を感じている。寂しさを抱えた瑠璃子は、ある日、非売品のベアを欲しがる青年・春男と出会い、急速に惹かれていく。一方、聡も大学の後輩であるしほと深い関係に。聡と瑠璃子は互いの相手と逢瀬を重ねるのだが…。

 夫の聡は帰宅すると自室に鍵をかけTVゲームに興じ、妻の瑠璃子は夫に用があるときは携帯でメールする。その不自然さを他者に指摘されれば、実は危機と感じているのに平気なふりをする。彼らの関係は波風をたてないための小さな嘘で成り立っているのだ。瑠璃子が「この家には恋が足りないと思うの」とうっかり本心を口に出したことから、嘘がもたらす不安が広がることに。ヒロインは子供がいないせいか、生活感をまったく感じさせない夢の中にいるような女性。だが春男に対し「人は守りたいものに対して嘘をつく」と残酷なことを言う。瑠璃子の心の澱みはかなりどす黒い。聡もまたしほとの関係にのめりこみながらも答えを出そうともしない。夫婦は日々の暮らしの中で互いの澱みを認識するが、それを浄化する唯一の方法が、生活臭い本音のつきあいではないのか。瑠璃子は「腕に入れて」と何度も聡に頼むが、そこは安全でも充足でもないポッカリと空いたブラックホールだ。この物語に白々しさを感じるのは、勇気を出して現実に向き合うことなく、透明で美しいと錯覚した嘘を正当化する姿に嫌悪感を覚えるからかもしれない。「もうすぐ帰る」という言葉は、ハッピーエンドではなく、嘘と嘘の間に生まれた僅かな休息。今回のW不倫はなんとか乗りきれても、夫婦の幸せな未来が見えてこない。この映画の暗い味わいは、不誠実な孤独感にあるのかもしれない。

渡まち子

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