◆日本の医療(70点)
前作「チームバチスタの栄光」に続き、海堂尊さんの医療ミステリー(白鳥&田口シリーズ)第二弾♪
今回は、バチスタ事件から1年後・・・相変わらずの窓際医師 田口(竹内結子さん)と、厚生労働省の偏屈役人 白鳥(阿部寛さん)のもとに《救命救急センター長(堺雅人さん)と医療機器メーカーとの癒着》を告発する文書が届いた。
真相を究明するべく、二人はまたコンビを組むこととなったのだ!
白鳥&田口のあの絶妙な凸凹コンビがもう一度観れるとあってわくわく♪期待を膨らませていたが、いい意味で裏切ってくれました♪
前作の"犯人探し的ストーリー"とは違い、今作は"真相究明のストーリー"ということで、折角(?)の白鳥の頭脳もほとんど活躍の場がなく、田口とともにほぼ脇役状態!!
あの二人が織り成す絶妙なコメディもほとんど観られず、これにいたっては残念でしたが、今作では、救命救急センター長、通称"ジェネラル・ルージュ(血まみれ将軍)"演じる"堺雅人さん"、彼の存在がとにかくすごくて、前作同様高得点をつけさせていただきました。
彼が本当に医療機器メーカーと癒着しているのか、いないのか、前半はここが焦点になっているのですが、彼の笑顔一つとっても、気持ち悪いような・・かわいいような・・人を挑発しているような・・人懐っこそうな・・っといい人そうでもあり悪い人そうでもある絶妙な演技は必見です!
そして、今作では、近年問題となってきている《医師不足》《救急車の受け入れ不能》《病院の経営と人命救助の両立》など日本医療に関する多くの問題がリアルに描き出されています。
日本医療の現実を突きつけるこの内容は、ニュース番組、ドキュメンタリーでも放映されており、本作ではこういった番組に興味を持たない人々にも映画という一つのエンターテイメントとして受け入れやすいものに作られていて、医師たちの鬼気迫った状況をリアルに目にすることで、《自己都合(無駄)な深夜診療の受診を控えよう》とか、とっさの事故や病気でパニックになるかもしれないけれど、《本当に救急車が必要なのか一歩踏みとどまって考える》とか自分にもできる何か、をもっと真剣に考え行動に移すことの大切さを優しく伝えてくれているように思いました。
また、"病院の経営"というものがどういったかたちで成り立っているのか、内科、外科、救命救急、近年では心療内科・・と"各医療機関どうしの連携"についても「そういうことになってるのか!」と初めて知ることもあり、とても勉強になったと同時に、今後の日本医療に危機感を持ち、考えさせられる内容でありました。
しかし、こんな重要で重たいテーマを提議しているにも関わらず、不思議と暗い感じはなく、むしろ、最後まで小細工の効いた展開には思わず笑みも漏れ、問題提起型映画として完成度が高い作品だと思います。
特に、チュッパチャップスが関わってくるシーンはなかなかいい味を出しています(笑)
堺さんがジェネラル・ルージュと呼ばれている本当の理由にしても、一瞬ギョっとするものの、医療現場の過酷さを醸し出すには台詞で何か言うよりもかなり印象的でした。
前作をご覧になられていなくても、ほとんど影響はないと思いますので、この作品はこの作品として、前作を観たかどうかに関わらず多くの人に観ていただいて、何かを感じていただけたらなと思います☆
最後に、原作について少し・・実は、一作目「チームバチスタの栄光」後、二作目として「ナイチンゲールの沈黙」があるのですが、二作目は、映像にしにくい内容であったためか、それとも犯人を簡単に絞り込める内容であったためか、今回は二作目を飛ばして三作目「ジェネラル・ルージュの凱旋」を映画化しています。
この選択は正解だと思いますが、原作では、「ナイチンゲールの沈黙」と「ジェネラル・ルージュの凱旋」の出来事が同時進行で描かれており、このあたりのお楽しみはやはり原作で♪味わって下さい!
(スタッフ古庄)