クローバーフィールド/HAKAISHA - 岡本太陽

全米No.1ヒットのニューヨークが巨大生物に襲われる超話題パニック映画(75点)

 2007年7月、全米でマイケル・ベイが監督した『トランスフォーマー』が公開した。その際の予告編で、ある映画が世間の目に触れた。その予告編ではニューヨークが、どうやら巨大な何かに襲われている事が確認できるが、一体それが何なのかは全く分からない。そして極めつけに、自由の女神の頭部がもぎ取られ、路上に叩き付けられる映像が流れるのだ。それ以降、アメリカではこの映画が多くのメディアで取りあげられ話題になった。それはプロデューサーにテレビシリーズ『24』や『LOST』のJ・J・エイブラムスを迎えた『クローバーフィールド/HAKAISHA(原題:CLOVERFIELD)』という作品だ。2008年初めてのスーパーパニック映画だ。

 ニューヨーク、ウォール街やグランド・ゼロ等が位置しているローワー・マンハッタン地区。ここで、ある晩日本へ発つロブ(マイケル・スタール=デヴィッド)のサプライズ送別パーティーが行われていた。ロブの兄弟のジェイソン(マイク・ヴォーゲル)らが企画したパーティーで、このパーティーにはロブが日本行きを告げた時から不仲になっているガールフレンドのベス(オデット・ヤストマン)も来た。ロブは彼女と話し合うが、結局彼らはけんか別れをしてしまう。そんな折り、突然地震が起こる。ロブ達は何が起こっているのか確認する為に屋上へ行くが、何かの大きな唸り声とともに、近くで大きな爆発が起こるのを目撃する。ロブは地上へ出て、攻撃を受けているマンハッタンから逃げる為に、ジェイソン、リリー(ジェシカ・ルーカス)、ハド(T・J・ミラー)、マレーナ(リジー・カプラン)と共に近くにあるブルックリンブリッジという大きな橋を渡ろうとするのだが…。

 まず、J・J・エイブラムスだが、テレビ界の他、映画界でも現在は活躍中である。近年では2006年公開の『ミッション・インポッシブルIII』の監督を務めた。今年には次の監督作品『STAR TREK』の公開を控えている。また『マトリックス』シリーズのウォシャウスキー兄弟が監督する、『マッハGO!GO!GO!』の実写版『SPEED RACER』の脚本も手掛けている。まさに売れっ子。コメディ界ではジャド・アパトウ、アクション・SF界ではJ・J・エイブラムスといったところだろうか。監督にはJ・J・エイブラムズを長年、製作パートナーとして支え続けたテレビシリーズ『フェリシティの青春』等のマット・リーヴスが務める。今まで監督した映画がほとんどないため、今回の『クローバーフィールド/HAKAISHA』で大々的に名前が売れる事になるだろう。

 この超パニックムービー『クローバーフィールド/HAKAISHA』はもうとにかく楽しむしかない。全編手持ちカメラで撮られた映像で構成され、観客は登場人物と同じ状況を体験するわけだが、登場人物達の行動に突っ込みを入れなが84分という超大作にしては非常に短い長さを緊張感を持ちながら楽しむことが出来る。

 主人公が日本に単身赴任するという事と、巨大な怪物が街を襲うという事から、誰しもがゴジラを連想するだろう。違う点はゴジラは核実験によって誕生した怪物で、1954年の公開当時、核爆弾という人間の生み出した産物によって、人間が恐怖のどん底に落とされるという内容が人々にショックを与えた。それは第二次世界大戦で核爆弾の脅威を体験した日本人にとってはなおさらのことだった。一方、『クローバーフィールド/HAKAISHA』にもやはり怪物が登場するのだが、こちらでは最後までその怪物が何なのかは全く明かされない。ただひたすらにニューヨークが攻撃を受け、人々が死に続けるのだ。これはもう9/11等のテロを連想させずにはいられない。映画の最初の方で演出される見えない恐怖はまさにそれだ。人々は何が起こっているのかさえ分からないまま逃げるしかない。ニューヨークが攻撃され9/11を連想させたのか、観終わった後、全くなくシーンはないにもかかわらず、観客の中には涙している人もいた。

 この作品、全編手持ちカメラでの映像でリアリティを追求しているが、この映画は観る人によっては、具合を悪くしてしまうだろう。なぜなら映像が揺れまくるからだ。映像に関してはリアリティを追求しているのは分かるのだが、いまいち登場人物の感情や行動に現実味が感じられないのが難点。特に主人公の行動は観ている方がイライラしてしまう程勇敢なのだが、もし登場人物達の行動にもリアリティを追求するのなら、そんなヒーロー的な行動は必要なかった。それがあることにより、どうしてもその他のパニック映画と同一化してしまうからだ。

 この映画は簡単に言えば、『ゴジラ』と昨年公開された『ミスト』を足して割った様な作品。『クローバーフィールド/HAKAISHA』に出て来る巨大な怪物はゴジラよりは『ミスト』に登場してくる怪物達に類似しているので、異世界の扉を開けてしまった『ミスト』の内容と『クローバーフィールド/HAKAISHA』の内容を関連づけて、新しい映画が作れそうだ。そしてもちろん主演は『アイ・アム・レジェンド』のウィル・スミスだろう。みんな彼がヒーローになる映画には飽きてしまったが。『クローバーフィールド/HAKAISHA』は日本公開時にも話題の作品になることは間違いない映画である。

岡本太陽

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