キューティー・ハニー - 前田有一

“ハニメーション”のおかげで、ただのおバカ映画ではなくなった(60点)

 大ヒットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』で知られる庵野秀明監督による実写アクション映画。永井豪の原作マンガを知る者も、知らない者も楽しめる楽しいつくりになっている。

 ナンセンスな展開とキャラ、原色使いの派手な画面はまさにアニメ的。安っぽいVFXやバカバカしい展開を楽しめる人向きの映画だ。随所に庵野監督らしい持ち味が発揮されており、監督のファンをニヤリとさせる。勢いに任せた序盤の展開が中盤以降にだれてしまい、妙に説教くさいテーマ性が顔を覗かせるあたりもこの監督らしいといえるか。

 主人公の“お尻の小さな女の子”如月ハニーを演じる佐藤江梨子も役柄にぴったりだ。ノーテンキでどこかネジの外れた変身前の天然少女っぷりと、変身後の勇ましい戦う女っぷりの落差が激しく、見ていて楽しい。ファンにとっては、この両者の違いが専門用語(?)でいう“萌え”というやつだろう。庵野ハニーは、まさに彼女の魅力をもって完成した。

 一見セクシーな変身後のコスチュームは、肌色部分も実は布地に覆われており、案外エッチさは感じない。むしろ変身前こそが男性陣にとっての見所で、パンツ一枚姿で開脚するわ、服も着ないで町を走るわとサトエリ的には大サービス。しかし、童顔にスレンダーなプロポーションのため、彼女が脱いでもエロさやいやらしさはほとんど感じない。庵野監督が狙った「ちょっとエッチ」程度の線で見事に収まっているので、案外女性が見ても大丈夫だろう。

 『キューティーハニー』で目を引く技術は、“ハニメーション”こと「エフェクトをかけた実写のスチル写真で作ったアニメーション」だ。庵野監督が考案し、日本アニメ界の誇るそうそうたるメンバーによって実現したこの特殊な映像は、この映画の中の数カ所で見ることができる。非常に斬新である。

 背景が単調だったりなど、まだ荒削りな部分はあるが、将来性のあるアイデアだと感じさせる。キューティーハニーが成功すれば、スタッフは次回作でこのアイデアをもっと進歩させてくるに違いない。これは非常に楽しみだ。日本の伝統的リミテッドアニメが積み上げてきた技術を実写に応用したこのハニメーションで、世界中をびっくりさせてほしいと私は思う。

 惜しむらくは、予告編その他で無遠慮にこの最大の見せ場を流しまくっていること。何も、最大のウリであるハニメーション部分を見せなくても、興味を引く予告編をつくれただろうに……。ユーザーとしては、テレビや上映館で予告編が流れたら目をつむって耐え忍ぶしか対処法がない。気になる方は、このレビューを読んだらさっさと劇場に見に行ってしまう方が良いだろう。

前田有一

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