エスター - 前田有一

美少女好きにもすすめたい、衝撃の一本(75点)

エスター

© DARK CASTLE HOLDINGS LLC

 『エスター』は、ある日ロシアから美少女が養子としてやってくるお話である。それはある種の嗜好を持つ人にとっては特に素敵な状況であろうが、正直なところ、そういう人にもぜひ本作を見てほしい。その理由は、いすから転げ落ちたついでに床をも突き破る、常識はずれの衝撃的結末をみればすぐにわかる。

 第三子を死産したことにより悪夢にうなされつづける妻ケイト(ベラ・ファーミガ)のため、夫ジョン(ピーター・サースガード)は養子を迎えることにした。施設でジョンは、聡明で絵の上手な9歳の少女エスター(イザベル・ファーマン)を直感的に気に入るが、それこそが悲劇の始まりだった。

 美少女エスターは、御伽噺にでてくるような古風な服を好み、首と手首に巻いたリボンは決してはずさない。バスルームには鍵をかけ、美しい声で歌を歌う。とにかく一風変わった、ヘンな子である。

 とはいえ、男はヘンな女性(美人限定)に弱い。それは相手が子供とて同じ事。ジョンもいい歳してエスターに何かを感じたのか、彼女が不気味な行動をとるようになっても庇護者であることをやめようとしない。実の息子や娘、あるいは妻はエスターの「おかしさ」にいち早く気づくが、それを受け入れない。これ異常なく、イライラする展開である。

 観客も家族もみんな、いいかげんわかっているのに、肝心の大黒柱が気づいてくれない。その女はおかしいんだって! 気をつけないとやばいぞ! 志村、うしろ! の世界。映画「エスター」は、そうしたむずがゆさを楽しむ作品である。

 この父親のみならず、他の登場人物もいやになるくらい鈍感だったり、思うように動いてくれなかったりで、これがまたたまらない。エスターの狙い通りに物事は進み(進まされ)、徐々に破滅の淵へと向かっていく。果たしてこのマヌケ、いや気の毒な一家は生きのびられるのか?!

 最大の売りである「結末・真相」には確かに相当びっくりするが、まあ考えてみれば、よくあること。大体、女の子なんてのは、多かれ少なかれコレと似たようなものである。アナタのそばにも、プチエスターは必ずいる。ほら、いまキッチンであなたの夕食を作っているその女性……。

前田有一

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