◆若い主人公が信頼できる仲間とともに冒険を続けるという、ありきたりな成長物語であるにもかかわらず、へんてこりんなカンフー映画を見た気分。しかし、その珍妙さもこれほどまで極めれば高尚なジョークように感じられる。(40点)
中国武術の達人のごとき流麗な体術で気を操る少年が、乱れた世界を正すために運命を受け入れる。その他にも土を操る部族や水を操る部族もなぜかその動きは中国風。彼らが一団となって修行に励む様は、少林寺を舞台にした数々の映画を彷彿させる。また、武装した軍団同士が激突する戦闘シーンでは、干戈を交えるものの血や肉が飛び散るリアルな残酷さとは程遠く、ほとんど死人が出ない。そもそも物語の世界観が曖昧で、若い主人公が信頼できる仲間とともに冒険を続けるうちに使命に目覚めるという、ある意味ありきたりな成長物語であるにもかかわらず、へんてこりんなカンフー映画を見た気分になる。しかし、その珍妙さもこれほどまで極めれば高尚なジョークように感じられ、結果として不思議な味わいを残す作品となった。
気・水・土・火の4つの国が共存する時代、火の国が反乱を起こし、他国を隷属させようとしていた。そんな時、4つのエレメントを操る能力を持った気のベンダー・アンが水の国のカタラとサカの前で復活、アンは他の3つのエレメントを身につけるために土の国に向かう。
早速土の国の村を火の国の兵士から解放したアンは、追われる身となり、罠にかかって捕らえられてしまう。その窮地を救うのが謎の仮面。彼の身のこなしは安手の米国製時代劇に出てくるニンジャそのもので、大勢の敵に囲まれた中でみせるカンフーとニンジャのコラボは、中途半端なコメディのような的を外したおかしさ漂っている。一方、アンがさまざまな秘術を繰り出して火の国の兵士を次々に倒していく場面では見せ方に工夫が見られるものの、どこかから拝借したアイデアの羅列。本来はクライマックスなのに、視覚効果ばかりに演出の重点が置かれ空疎な内容になってしまった。
アンは火の国を追放になったズーコ王子にもつけ狙われている。火のベンダーでありながらアンと気持ちを通わせるこのズーコこそ、今後のキーパーソンになるのだろう。結局、ストーリーの結論は続編に持ち越されるのだが、はやくもラジー賞の予感がするこの作品に次はあるのだろうか。。。
(福本次郎)