ウォンテッド - 岡本太陽

J・マカヴォイが生徒、アンジーがサディスティックな先生を演じるアクション大作(80点)

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 2004年にロシアで誕生したファンタジー・アクション映画『ナイト・ウォッチ』。セルゲイ・ルキヤネンコの小説を映画化したこの作品は特に世界のオタク達の間でセンセーションを巻き起こした。現在そのシリーズは2作目の『デイ・ウォッチ』までが公開されている。『ナイト・ウォッチ』『デイ・ウォッチ』を監督したのはカザフスタン出身のティムール・ベクマンベトフ。シリーズの3作目の公開が期待されている中、彼が新たに放つ作品はなんとハリウッド映画。マーク・ミラーのコミックを映画化したその『ウォンテッド(原題:WANTED)』にはジェームズ・マカヴォイ、アンジェリーナ・ジョリー、モーガン・フリーマン等超豪華なスターが集った。

 会計士として働く25歳のウェズリー・ギブソンは仕事にも意義を見出せず、恋人にも浮気され、憂鬱な日々を送っている。ある日彼が薬局に行くと、フォックスと名乗る会った事すらない女が『あなたの父の事を知っている』と突然話し掛けて来る。父の事は死んだと思い込んでいたウェズリーだが、フォックスは彼の父親が1日前に暗殺された事を告げる。そしてこの時を境に、ウェズリーはクロスという男に命を狙われ始める。フォックスは彼女が所属する1000年前から続く秘密の暗殺組織にウェズリーを連れて行く。そこでウェズリーは組織のボスであるスローンに彼が暗殺者の才能がある事、そしてクロスが彼の父親を殺したことを告げられる。ウェズリーはその暗殺組織に訓練を受け、父の復讐を待ち望むのだが…。

 このティムール・ベクマンベトフ監督のハリウッドデビュー作『ウォンテッド』では、とにかく見た事のない凄い映像がスクリーンに映し出される。昨年の銃撃戦映画『シューテム・アップ』にも似た雰囲気を醸し出している。人が建物の内部からガラスを突き破ってだいぶ離れた隣のビルに着地したり、列車の窓にアンジェリーナ・ジョリーが運転する車が思いっきり突っ込んで行ったりと、かなり激しい映像満載の作品だ。

 映像技術自体はそこまで新しくはなく、スローモーションの多様で、どうしてもマトリックスを思い出させる。『ナイト・ウォッチ』『デイ・ウォッチ』もそうだったが、ベクマンベトフ監督はウォシャウスキー兄弟が生み出した革新的映像を自分のものにしている。『ウォンテッド』の中では映像だけではなく、キャラクター設定もマトリックスに近く、モーガン・フリーマン演じるスローンはローレンス・フィッシュバーン演じたモーフィアスで、アンジェリーナ・ジョリー演じるフォックスはキャリー=アン・モスのトリニティ、そしてジェームズ・マカヴォイ演じるウェズリーはキアヌ・リーヴスのネオ。ただスローンのキャラクターは別にモーガン・フリーマンでなくても良かった程つまらない。わざわざ彼を使うのならもっと面白みのあるキャラクターにしてあればなお良かった。

 この映画の映像を語る上で、絶対に外せないのが銃弾がカーブを描いて標的に当たるという事。選ばれた者だけの撃った銃弾がカーブを描く事が出来るらしく、物語の中に登場する暗殺組織に所属する暗殺者達は皆その技術がある。主人公ウェズリーもその訓練を受ける。撃った銃弾がカーブを描くシーンで一番ありえないのは最後にアンジェリーナ・ジョリーが放つ銃弾が円を描くところだ。どの様な状況でそのシーンが出て来るかはお楽しみ。

 キャストは主要な3人以外にもテレンス・スタンプ、トーマス・クレッチマン、コモン等が出演し、特にウェズリーの父親を暗殺したとされるトーマス・クレッチマン演じるクロスには注目だ。あと、ネズミの大群がこの映画では大活躍する事にも目が離せない。

 今までイギリス人俳優ジェームズ・マカヴォイには全くアクション映画のイメージがなかったのだが、彼が暗殺組織の秘密を知り、1人でそこに乗り込んで行く時はクールな彼の姿を見る事が出来、ジェームズ・マカヴォイのファンも極端に増えそうだ。

 また、『ウォンテッド』の中で特に異彩を放つのがフォックスを演じるアンジェリーナ・ジョリー。彼女のキャラクターが良い!完璧なキャスティング。彼女の見た目がこの世のものとは思えないので、特にこれといってキャラクターのないこのサディスティックな役にぴったり。ジェームズ・マカヴォイに殴る蹴るの暴行を何度となく加え、全裸の後ろ姿を見せつけたり、不意のキスで悩殺する。ウェズリーはフォックスに事実上拷問を受けるわけで、観客にもアンジェリーナ・ジョリーにだったら拷問されても良い!と思わせる作りになっているところがこの映画のミソなのだ。

 銃弾がカーブを描いて飛んで行ったり、サディスティックなアンジェリーナ・ジョリーを拝めたりと冗談の様な映画だが、監督のアイデアの詰まった遊び心ある映画と評価出来る。記憶に残る物語ではないのが残念なところだが、衝撃的な映像満載で映像面では満足感を得られるだろう。この映画がヒットすれば、世界的にティムール・ベクマンベトフ監督の知名度も一気に上がり、もっと強烈な作品を今後発表していく事だろう。『ウォンテッド』は今年のサマームービーの中の異色作だ。

岡本太陽

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