アライブ-生還者- - 福本次郎

事故の当事者たちは生還できた幸運に感謝しながらも、人肉を口にしたことに苦しみ、世間の好奇の目にさらされながら生きてきたはず。航空機事故の生存者が、極限の状況下で生き残るために何をしたか、遠い過去をふりかえる。(50点)

アライブ-生還者-

© Ethan Productions

 「悲劇が歴史に変わるまで30年かかった」という言葉通り、事故の当事者たちは生還できた幸運に感謝しながらも、人肉を口にしたことに苦しみ、世間の好奇の目にさらされながら生きてきたはず。その間、記憶を整理し、都合の悪い事実を消去する一方、どうしても忘れられない光景や忌まわしい感覚がより鮮明になったり、新たな解釈も加わったに違いない。航空機事故の生存者が、極限の状況下で生き残るために何をしたか、衝撃的な行為とともに遠い過去をふりかえる。

 ’72年10月ウルグアイの航空機がアンデス山中に不時着、29人が助かったが荒天のため捜索は打ち切られる。やがて食べものが底をつき、犠牲者の体を食べて飢えをしのぐようになる。

 当時学生だった彼らも今は50代。生存者はすべてまだ存命中だ。後半生は当然、「なぜ自分は死なかったのか」と自問自答を繰り返すと共に、無遠慮な視線と憶測の中で息を潜めるようにして過ごしてきたのだろう。しかし、やっと重い口を開いたときに新たな事実を思い出したり、衝撃的な真実が明かされることはなく、琴線に触れるようなピアノのサウンドと共に淡々と語られるだけ。その後、アンデスの現場で彼らの子供たちに、いまこの世に存在するのは誰のおかげかであるかを教えるシーンは、やっとこの苦悩に区切りをつけられたことを物語る。

 遭難時の様子はホームビデオ風のドキュメンタリータッチの映像で再現される。最初は助かったことに安堵しながらも、救助隊が来ないと知り空腹に耐えられなくなる過程で、希望が絶望に変わっていく。そのあたりまでの気持ちは理解できる。だが、友人の肉や骨で飢えを満たしたとき、キリストの聖餐にたとえるが、そんなきれいごとではなくもっとどろどろとしたむきだし感情の衝突があったはずだ。さらに人肉の味や調理法など、一番興味のある部分には触れられない。生存者へのインタビューでは突っ込めなくても、再現フィルムではタブーに触れるべきだった。生き抜くことの素晴らしさを描きたいのは分るが、彼らのエネルギーの源になった食糧についての表現が表面的になってしまったのが物足りなかった。

福本次郎

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