アクロス・ザ・ユニバース - 岡本太陽

The Beatlesの楽曲によるミュージカル映画(75点)

 ザ・ビートルズ。イギリスはリヴァプール出身で世界で最も有名なロックバンドである。1962年にレコードデビューし、1970年に解散した。彼らが活動した約9年間に残した功績は計り知れない。そして彼らの楽曲の多くは普遍で、現在もなお、ファンを増やし続けている。わたしは約1年程前の2006年秋に、ある映画の予告編を観た。それはザ・ビートルズの楽曲を使用したミュージカル映画であった。そのタイトルはザ・ビートルズの曲の中にもある『ACROSS THE UNIVERSE(邦題:アクロス・ザ・ユニバース)』。この映画がやっと今秋公開になった。

 監督を務めたのは映画『タイタス』や『フリーダ』のジュリー・テイモア。彼女はブロードウェイ等の舞台演出出身の映画監督である。彼女が演出したブロードウェイミュージカルの『ライオンキング』はあまりにも有名である。『タイタス』や『フリーダ』はドラマ映画というカテゴリーに入ると思うが、今回の『ACROSS THE UNIVERSE』は彼女の得意分野のミュージカルだ。

 物語の舞台は60年代、ベトナム戦争中のアメリカ。たくさんのビートルズの楽曲を映画の中のキャラクター達が歌い踊る事によってストーリーは構成される。ジュードというリヴァプール出身のアーティスト志望の若い男が、父親を捜しにアメリカを訪れる。そしてそこでルーシーという女の子に出会う。彼らはすぐに恋に落ちるが、アメリカが目まぐるしく変化していった時代の60年代の波と共に、彼らの恋にも変化が訪れる…。ジュードとルーシーの恋、そして変化していったアメリカの2つの側面を描いた作品である。

 主演のジュードにはイギリス人俳優ジム・スターゲスが抜擢された。今までに代表作は特にはないが、今後が期待されている俳優である。来年にはケヴィン・スペイシーやマシ・オカ等と共演する『21』等が待機している。そしてジュードと恋に落ちるルーシーをエヴァン・レイチェル・ウッドが演じる。彼女はたくさんの映画に出演しているが、2003年公開で彼女が主演した『サーティーン/あの頃欲しかった愛のこと』での印象が強烈で、その年のゴールデン・グローブ賞にノミネートされた。その他はジョー・アンダーソン、ボノ(U2)、サルマ・ハエック等が出演している。

 この『ACROSS THE UNIVERSE』という映画、実はプロデューサーと監督の間で上映時間をめぐって衝突があったそうだ。監督編集による長さだと、長過ぎて観客の興味を損なってしまう危険性があるというのがプロデューサーの意見で、そのプロデューサーが監督に無断で30分短くして試写を行ったところ、評判は上々だった。それを知った監督は激怒し、それから衝突が激化したらしい。わたしの観たものは短いバージョンだったかはわからないが、多少長くは感じた。すごく良いシーンがいくつもあるにも関わらず、作品1つとしてのまとまりがあまり良くなかった。変にドラマの部分が多く、テンポが悪いというか、今年公開された『ヘアスプレー』の様にもろにミュージカル風にしてもよかったのではないだろうか。

 ところで、タイトルの『ACROSS THE UNIVERSE』だが、The Beatlesの同名曲で、この作品はジョン・レノンの精神世界や価値観を表した様な曲。そしてThe Beatlesの曲を通して、ジュリー・テイモアの作り出す映像は彼女の精神世界を映し出す。彼らの音と映像のコラボレーションは純粋で生き生きしており、感情の高まりを感じずにはいられない。それを最も象徴しているのはサーカス団等が出て来たり、登場人物9人が輪になって草むらに横たわるシーンではないだろうか。非常に空想的なシーンだ。またアーティストのジュードが作り出すイチゴのアート等もそれだろう。彼が苦しんだ末に作り出した出血するイチゴは、楽曲「Strawberry Fields Forever」と融合し、ドラマを生み出す。

 物語は60年代のアメリカはニューヨークが主な舞台だが、ベトナム戦争や黒人解放運動時の混沌とした状況をロックと共に良く描いていた。ピースを願う若者達は、あの時代に唯一確かだったもの=音楽に言葉を乗せ「愛」を歌う。60年代のピースというと、どうしてもドラッグ、セックス、ロックの印象があり、それにも多少触れているが、『ACROSS THE UNIVERSE』はそこまでハードな内容ではない。重要なのは「愛」だ。この映画を観たら、ヒッピーに共感した事がなかった人でも、もしかしたら共感してしまうかもしれない…。ストーリー終盤にThe Beatlesの曲「All You Need Is Love」を主人公ジュードはルーシーに彼の存在や愛を気付かせる為に歌うのだが、それと同じ様に、監督のジュリー・テイモアはこの作品を通して、わたしたちに「All You Need Is Love」という強いメッセージを気付かせようとしている。

 映画の影響というのは大きくて、この映画を観たら、多くの人がThe Beatlesの楽曲を聴きたくなるだろう。実はわたしも家に帰って、好きな「REVOLVER」というアルバムを聴いた。The Beatlesの偉大さを改めて感じる映画である。

岡本太陽

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