アイ・アム・レジェンド - 前田有一

人類最後の一人になっちゃいました(70点)

 何かの間違いで人類が滅び、地上最後の一人になってしまったらどうするか。『アイ・アム・レジェンド』は、そんな男の物語だ。

 ガンを根絶する画期的な新薬が開発された。やがてその万能性から、人類を救う大発明ともてはやされる。それから数年後、無人化して荒廃するニューヨークの街で、一人の男(ウィル・スミス)と一匹の犬がサバイバルしていた。毎日AMラジオ全周波数で他の生存者に呼びかけているものの、いまだ誰からも返事はない。自分以外の人類は絶滅してしまったのだろうか。

 朽ち果てていく大量の車の脇を、野生動物が走り去る。猟銃代わりの軍用自動小銃を片手に、それを狩る男。公園には彼の植えたトウモロコシ畑があり、家には保存食料が備蓄されている。そんなショッキングな暮らしぶりと、数年前、まだ繁栄していた大都会の様子が交互に写される。徐々に何がおきたのか、観客も理解していくという寸法だ。

 大都市に人がまったくおらず、アスファルトの隙間から雑草が伸びている光景というのは、なんと衝撃的か。本物のニューヨークロケに、最新の映像処理が加わりその映像は見ごたえ十分。人に溢れる「カタストロフィ以前」の見慣れた風景が頻繁に挟まれるため、さらにその差が際立っている。

 ちなみに主演のウィル・スミスはサービス精神旺盛な男で、宣伝のための来日中、肝心のオチを記者会見でバラしてしまった。よく見ると、劇中でも主人公はかなりおっちょこちょいな事をやっているが(犬を抱く場面や、マネキンと意外な場所で出会うところ)、作品に重量感があるため鑑賞中はそのバカっぽさに気づきにくい。自由に物資やインフラを使える状況にあるのだから、自分ならこうするなぁ、というむずがゆさは感じるが、それだけ強く感情移入しているということだろう。

 モノは豊富にあるものの、体はひとつ。医者がいない分、小さなケガさえ命取り。そんな特殊な状況が、外敵に襲われる場面の緊迫感を高めており面白い。

 本作は話のスケールが巨大なため、パニック大作の要素もあるが、本質的には終末ホラーだ。「なぜ主人公は一人なのか」「どうやって生活しているのか」「何をしようとしているのか」「ほかの人が滅びた原因は?」などなど、興味深い謎を小出しにしてくるため、一切退屈とは無縁。面白さだけなら満点だ。

 ただ、それぞれのネタがどれもこれも予想の範囲内で、意外性も驚きもない点は物足りない。大掛かりな仕掛けのみで、心を打つテーマがないから、映画史に残ることもないだろう。

 ここはニューヨーク使い放題という、物欲にまみれた現代人の空想力を刺激する映像だけで十分と考え、多大な期待を寄せずに鑑賞することをすすめておく。

前田有一

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