わずかな希望すら許されないコピーたちの姿に、自由の大切さを再認識させられた。 (点数 60点)
(C)2010 Twentieth Century Fox
感情があり、他人を思いやる気持ちもあり、考えて行動する知能もあ
る。なのに体は自分のものではない。それでも彼らは誰かを助けるた
めだけの人生を粛々と受け入れる。もっと生きたいという本能を抑え
つけて。物語は臓器提供者として生まれ育てられた子供たちの日常を
丁寧に掬い取り、はたしてクローンにも魂があるのかと問いかける。
冷たく沈んだトーンの映像と哀切を帯びた音楽が、彼らの苦悩よりも
あきらめ、夢よりも先のない未来を象徴し、救いのない物悲しさが胸
を締め付ける。
寄宿制学校の生徒・キャシーはトミーに恋をするが、親友のルースに
トミーを横取りされる。成長した3人は同じ学校に進学、恋人同士のト
ミーとルースを気にしながら、キャシーは介護士を志す。
子どもたちは新任の先生に、将来臓器ドナーとなるのを義務付けられ
ていて長生きはできないと教えられる。その時は言葉の意味がよく理
解できなくても、成人するころになると「真剣に恋をすると臓器提供
が猶予される」噂に縋りつこうとする。
一方で学校を訪れた“マダム”や出入り業者の、キャシーたちに送る
蔑むような視線は、人間がクローンを下等な生き物ととらえている証
拠。映画はあえてクローンに対する差別や抑圧を描かない。だがそれ
は、クローンが完全な管理下にあることを明確にする。わずかな希望
すら許されないコピーたちの姿に、自由の大切さを再認識させられた。
(福本次郎)