てぃだかんかん~海とサンゴと小さな奇跡~ - 福本次郎

てぃだかんかん~海とサンゴと小さな奇跡~

© 2010『てぃだかんかん』製作委員会

◆己の目標と家族の幸せを秤にかけながら、物質的な豊かさよりも、美しいサンゴの海を取り戻すという使命に突き動かされた主人公の生き方が胸を熱くする。しかし、中途半端に笑いを取ろうとするシーンが彼の熱意に水を差す。(50点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 沖縄の海に美しいサンゴを取り戻したい。そんな思いにとりつかれた男の一途な行動は、妻子を、友人を、やがては無関心だった人々や開発推進派までも動かしていく。己の目標と家族の幸せを秤にかけながら、物質的な豊かさよりも、環境をこれ以上悪化させてはならないという使命に突き動かされた彼の愚直な生き方が胸を熱くする。しかし、真面目な題材なのに母親が渾身のフックを見舞うという不自然かつ中途半端に笑いを取ろうとするシーンが頻発し、せっかく高邁な理想を持った主人公の熱意に水を差している。いくらコメディアンが演じているからといえ、この作品にバラエティ番組のような低俗な笑いを持ち込む必要があったのだろうか。

 子供のころから海の生物が好きだった健司は幼なじみの由莉と結婚、バー経営で稼いだ金を元手にサンゴの養殖を始める。さまざまな試行錯誤で独自の方法を生み出すが、サンゴを移植しようとして漁協や役所の反対にあう。

 健司自身はエコロジーを声高に叫んでいるわけではなく、ただサンゴの幼樹を海底の岩に移植してサンゴ礁に育てようと考えているだけ。なのに周囲は何とかムーブメントとして取り扱おうとする。自分の仕事を進めていると、いつの間にか“時の人”のように祭り上げられてしまった健司の戸惑いと、借金にがんじがらめになっても物事をあまり悲観的に考えない南国特有ののどかさが、沖縄弁の絶妙の間とアクセントで見事に表現されていた。どんな危機的な状況でも切羽詰まって見えないのは本土に住む人間の偏見なのか。

 その後、大勢のダイバーや漁師の協力を得て、サンゴの大規模な移植に成功、産卵するかどうかがプロジェクトの焦点になる。このあたりも、関係者のテンションに対して健司はどこか他人事のような距離感を抱いている。本来ならば先頭に立って指揮すべきなのに、傍観者のような態度だ。モデルとなった人物がこういうキャラクターだったのかもしれないが、映画的な盛り上がりを考えたらもう少し脚色してもよかったはず。少なくとも母親に思いっきりぶんなぐられるよりはましだ。

福本次郎

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