感動を演出する方法に誤りがある(35点)
大林作品に死はつきもの。だか今回は感動を演出する方法に誤りがある。物語は、余命わずかと宣告された妻と、彼女を見守る夫や子供たちの最後の日々をつづるものだ。たたみかけるようなセリフやカット割は、残り少ない人生を静かに大切に生きる人物の描写には不適切。モチーフとして多用する宮沢賢治の世界観もフィットせず、いきなり素人芝居が入り込んだように見える。この物語はストレートな家族愛だけで十分なはず。美しい詩や音楽は小道具としてさりげなく使うべきだ。過剰なノスタルジーや叙情性が、習慣化した作家性としか映らないようでは才人・大林宣彦の名がすたる。
(渡まち子)