いま、会いにゆきます - 前田有一

竹内結子ファン製造映画(60点)

 市川拓司の同名ベストセラーの映画化。原作は口コミを中心に30万部突破というロングランヒット中であり、そんな背景からこの映画も『世界の中心で、愛をさけぶ』の再来などといわれている。(別名二番煎じ)

 主人公は愛する妻(竹内結子)に先立たれ、小学生の息子と二人で暮らしている父親(中村獅童)。彼は障害を持っているため家事が満足にできないが、理解ある息子と支えあって生きていた。そんなある日、息子の遊び場である廃屋に死んだはずの妻が一切の記憶を失って現れる。

 妻が生前息子に残した絵本には、「私は雨の季節に現れ、雨の季節の終わりとともに去るの」と書いてある。彼女は梅雨の季節の間だけ、二人の前に戻ってきたのだ。この「奇跡」について、ストーリー上しっかりとした理由付けがしてあり、映画的なリアリティをもって成立しているところが上手い。

 そんな「いま、会いにゆきます」は、愛にあふれた感動のファンタジードラマだが、実はちょいとおとなしい印象だ。もっとドカドカ泣かせてくれてもいい。ただ、よく「世界の中心で、愛をさけぶ」と比較されるが、あちらよりははるかに出来がいい。何よりストーリー、プロットがいい。見せ方が後一歩というだけの話だ。

 とくに、真相部分の繰り返しがくどい。あの部分には余計なセリフや同じアングルの映像の重複などまったく不要だった。ここをもっとスマートに演出できれば、大化けする可能性はあった。残念なことこの上ない。

 この物語はキャラクターが立っているので、演じる役者にとってもやりやすかっただろう。主要な3名はもちろんのこと、YOUや市川実日子ら脇役も光っている。終盤、梅雨明け時の二人の演技は泣かせる。

 そして、何より本作のヒロイン竹内結子の存在感、これは相当なものがある。まさに「私の映画よ!」ってな感じで、あらゆるカットで彼女は美しく撮られている。とくに、キスされ顔のかわいらしさは超一級で、この映画を見れば多くの男性が一瞬で彼女に魅入られ、ファンになってしまうのではと思うほどの破壊力だ。

 それにしても、この映画のタイトルはすばらしい。私は一ミステリファンとして、こういう大胆なタイトルをつける作者のセンスに心より感服する次第である。私としては、「セカチュー」なんかと比べるのはもったいないとすら思っている。「いま、会いにゆきます」は、誰もが楽しめるファンタジーとしてとてもいい。ごく一般的な人々にとって、かなり楽しめる映画であることは間違いないだろう。

前田有一

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