いとしい人 - 福本次郎

口元だけでなく、目尻にも眉間にも額にも深く刻まれたシワと、筋立った鎖骨からあごのライン。40歳を目前にしたヒロインの外見はまるで50代のようだ。物語に「恋愛」が要素に入っている以上、もう少し夢のあるメークをして欲しい。(40点)

いとしい人

 口元だけでなく、目尻にも眉間にも額にも深く刻まれたシワと、何本も筋が立った鎖骨からあごにかけてのライン。40歳を目前にしたヒロインを演じるヘレン・ハントの外見はまるで50代のようだ。いくら男運に恵まれない薄給の小学校教師という設定にリアリティを出すためとはいえ、39歳でこれほど老けた女性はいないのではないか。もしかしてこれは特殊メークだったのか。彼女の母親役を演じたベット・ミドラーのほうが現役の「女」として頑張っている役柄である分、むしろ若々しく見える。物語に「恋愛」が要素として入っている以上、もう少し夢のあるメークをして欲しかった。

 子供を望むエイプリルは夫のベンから別れを切り出された上、養母が急死するなど不運続き。そんな時、エイプリルの実の母と名乗るバーニスが現れたり、担任のクラス児童の父兄・フランクと急接近したりと、エイプリルの身辺はにわかに騒がしくなる。さらに願っていた妊娠が判明する。

 エイプリルの養父母はユダヤ系で、彼女自身祈りの言葉はヘブライ語で唱える。作中に紹介されるユダヤジョークの伏線になっているが、そのジョークは信頼と同時に他人を頼りにしすぎるなという戒め。ほかにも命の大切さをも説いているようだが、この映画に引用した意図がイマイチよく分らなかった。体外受精が珍しくなくなった時代、精子さえ手に入れれば女性一人で出産・育児はこなせるということなのだろうか。

 ベンやフランクとの微妙な距離に悩みつつバーニスとの新たな親子関係を発展させ、エイプリルの日常は好転の兆しを見せる。しかし、彼女の感情の振幅が余りにも大きく大人気ない。せっかくフランクとうまくいきかけているのにベンに連絡を取った上にカーセックスに興じたり、過去を反省しているバーニスの瑕疵にへそを曲げたりと、とても分別のある中年とは思えない軽薄さ。出産年齢ギリギリで焦っているのは理解できるが、感情的で周囲を振りまわしているオバサンにしか見えなかった。彼女がもっと魅力的な人物ならわがままも許せるのだが。。。

福本次郎

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