Z108地区~ゾンビ包囲網~ - 小梶勝男

台湾のゾンビ映画。エログロ・ナンセンスの乱れうちでサービス満点だが、今一つ盛り上がりに欠ける(点数 55点)


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日本では世界各国のゾンビ映画が公開されてきたが、今回は台湾のゾンビ映画。
中華文化圏である台湾には、幽幻道士シリーズなど、キョンシーの伝統がある。
いわゆる屍鬼だが、この作品はそういう伝統的なリビングデッドより、ジョージ・A・ロメロがブードゥーのゾンビに吸血鬼の要素を取り入れて作り上げたモダンゾンビの色が濃い。

製薬工場の事故で謎のウイルスが拡散し、108地区ではゾンビが大量発生する。
SWATが市民の救出に向かうが、ゾンビにやられ、生き残った隊員たちはマフィアや、非感染者たちと一緒にゾンビの群れから脱出しようとする。
その一方、猟奇犯罪者が女性たちを監禁し、いたぶっていた。

とにかく、サービスたっぷりである。
SWATはゾンビを撃ちまくり、マフィアとの銃撃戦もある。
頭も手足も乱れ飛ぶスプラッター描写も、SWATの隊員によるクンフーアクション(総合格闘技のようだ。シラットかも)もあるし、パルクールを使う黒人も出てくる。
猟奇犯罪者は「悪魔のいけにえ」のレザーフェイスというより、「恐怖のいけにえ」のフリークスみたいで、美女をレイプしたり、小便をかけたり、やりたい放題。
さらに、「パラノーマル・アクティビティ」などのフェイク・ドキュメンタリーを意識しているのか、ときどき監視カメラ目線の映像が入るのが意味不明だ。
マフィアの親分はゾンビになるとラン・ナイチョイの「力王」の所長のような化け物になる。
エログロ・ナンセンスの乱れうちなのである。

しかし、これほどサービスたっぷりなのに盛り上がらないのは、まるでウーヴェ・ボルの映画のようである。
監督・脚本・プロデュースのジョー・チェンは、台湾のウーヴェ・ボルと言っていいかも知れない。
この手の映画は好きなので悪く言いたくはないが、細かいカット割りはアクションや残酷描写をごまかしているようにしか見えない。
もうちょっと頑張って欲しかった。
描きたいものははっきりしているのだから、正面から描いて欲しかった。

この映画の本当の凶悪さは、日本の東日本大震災がゾンビ化に関係しているという設定だ。
テレビの報道として、日本の原発事故がチラッと出てきてそれを暗示している。
大震災も完全にエンターティンメントに消化されている。
「外事警察 その男に騙されるな」の時は驚いたが、今回はもう、驚くというより、時間の流れの速さに呆れるばかりだ。

小梶勝男

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