POV~呪われたフィルム~ - 小梶勝男

Jホラーの先駆者・鶴田法男監督がPOV(主観映像)に挑んだ意欲作。フェイク・ドキュメンタリーがラストで一気にエンターティンメントに昇華されるのが見事(点数 75点)


(C)2012「POV 呪われたフィルム」製作委員会

 鶴田法男監督は、Jホラーの先駆者として知られている。初監督のビデオ作品「ほんとにあった怖い話」(1991)などで、今日「Jホラー」と呼ばれるジャンルの演出法の基礎を確立したのだ。「ほんとにあった怖い話 第二夜」(1991)に収録された「霊のうごめく家」は特に有名だ。この作品からJホラーが始まったと言ってもいい。

 ちなみに、Jホラーの演出法を「小中理論」と呼ぶことがあり、私も便宜上、そう呼んできたが、正確には「小中=鶴田理論」と呼ぶべきだろう。Jホラーの演出法を生み出した創始者にもかかわらず、鶴田監督がJホラー的演出に追従した「小中理論の体現者」と誤解されることがあるという。実際には、脚本家の小中千昭とともに、「ほんとにあった怖い話」でJホラーの演出法を作り上げていったのは、鶴田監督なのだ。小中も著書「ホラー映画の魅力 ファンダメンタル・ホラー宣言」(岩波アクティブ新書)の中で、「鶴田法男氏とは、撮影前、そして完成後にも対話をし、いかにしたら実話再現ドラマにて怖い映像が生み出せるかについての検討を重ねていた。(中略)このときには明文化していなかったこれらのことを高橋洋氏へ説明するときに、後に<小中理論>と命名されるものができ上がっていく。」と明瞭に書いている。明文化した功績は小中氏にあるので、先に名前を挙げるとしても、誤解がある以上、今後は「小中=鶴田理論」とすべきだと思う。

 その鶴田監督が、なぜ今さら、「パラノーマル・アクティビティ」のようなPOV(主観映像)によるフェイク・ドキュメンタリーのホラーに取り組んだのか。見終わって、その意味が分かった。生々しいフェイク・ドキュメンタリーが、ラストで驚くべき展開を見せ、鮮やかにエンターティンメントとなっているのだ。

 志田未来、川口春奈の2人が、実名で登場する。彼女らは、携帯電話向け番組の収録で、投稿された心霊動画を紹介している。モニターに突然、予定になかった心霊動画が流れ始める。それは川口が通っていた中学校の怪異を撮影した映像だった。「中学校に行って浄霊しなければならない」という霊能者の言葉に、2人はディレクター、マネージャーらとともに現場を訪れる。

 フェイク・ドキュメンタリーとしては、鶴田監督がこれまで培ってきたJホラーの手法が存分に発揮されている。スプラッターやスラッシャーのような現実離れした残酷描写ではなく、リアルな心霊表現が怖い。「本物」とされる心霊写真や心霊動画に、ゾッとした体験は誰にでもあるだろう。あの怖さが、映画にうまく生かされている。かといって、「パラノーマル・アクティビティ」のように、ただカメラを据えっぱなしにして撮った映像とも違う。あくまでも「事実」として提示されながら、映画的な見せ方もしている。そのせめぎ合いが面白い。それがラストで、一気にエンターティンメントに昇華される。「小中=鶴田理論」を自ら打ち破ってみせるのが、実に痛快だ。

「Jホラーのネクストステージ」への鶴田監督の挑戦は、成功したと言えるだろう。

小梶勝男

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