人間を無理やりセイウチに改造する狂った博士を描くホラー。笑いを交えながらも実に不気味で怖い。セイウチ人間の造形が素晴らしい(点数 75点)。
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セイウチ。キバはあっても丸みのある体形がユーモラスで、ホラーには不向きと思われる。
世の中には変わった人がいるもので、そんなセイウチを主人公にホラーを作ってしまった。
正確には、セイウチ人間が主人公だろうか。
人間を無理やりセイウチにしてしまうのである。
しかも、あの「シックス・センス」の天才子役、ハーレイ・ジョエル・オスメントのほか、ノークレジットで超大物俳優も出演している。
ユーモラスな雰囲気が漂いつつ、何とも不気味で奇怪なホラーとなった。
ポッドキャスト(インターネット上の番組)を運営するウォレス(ジャスティン・ロング)とテディ(オスメント)。
ウォレスは「キル・ビル」のマネをして日本刀を振り回して遊んでいるうち、自分の脚を斬ってしまった若者を取材するため、カナダへ行く。
しかし、若者は自殺していた。
番組のネタがなくなって落胆するウォレスだが、偶然入ったバーで、様々な場所を航海したという男の存在を知る。
男はハワード(マイケル・バークス)という老人だった。
彼の館を訪ねたウォレスは、冒険譚を聞くうち、気を失ってしまう。
目が覚めると、片脚がなくなっていた。老人はウォレスをセイウチに改造しようとしているのだった。
行方が分からなくなったウォレスを捜しに、ウォレスの恋人(ジェネシス・ロドリゲス)とテディがカナダを旅する。
笑いを交えながらも、物語は狂気をはらんで実に気味悪い。
カナダの田舎を舞台にしたヒルビリー・ホラーであり、フランケンシュタイン博士の物語につらなる人体改造ものでもあり、連続猟奇殺人ものでもある。
ハワードはウォレスをセイウチにするため、両脚を切断し、両腕を体に縫い付け、歯を抜き、舌を切る。
両脚の骨を削って牙にして、口の中に無理やりに差し込む。
最後に人間の皮で作ったセイウチスーツをかぶせる。
「手術」の過程は細かくは描かれないが、ちょっとした描写やセリフが実に怖い。
狂ったハワードを演じるバークスが真に迫っているからだろう。
目の奥に狂気が宿っているように見える。そして、セイウチ人間の造形が素晴らしい。
「怪奇!吸血人間スネーク」の蛇人間を思わせる出来栄えだ。しかも、「吸血人間スネーク」より、映画ははるかによく出来ている。
久しぶりに見るオスメントは、顔は昔のままだが体形はセイウチみたいになっていた。
こちらが本物のセイウチ人間か?
後半は頭のおかしい探偵役で超大物俳優が登場する。
彼の存在が物語の陰惨さを和らげている。
監督は「クラークス」「ドグマ」など、一筋縄ではいかない作品を作り続けているケヴィン・スミス。今回の作品も、バカバカしい笑いのすぐ後に、冷や水を浴びせかけるようなグロテスクな描写があったり、狂気が時に笑いに、時に恐怖になったりして、油断がならない。ラストは衝撃的。後味の悪さもまた、楽しかった。
(小梶勝男)