『25年目の弦楽四重奏』アカデミー賞俳優たちが贈るビターだけど元気のでる人間ドラマ(点数 90点)
(C)A Late Quartet LLC 2012
弦楽四重奏団「フーガ」の結成から、25年。
ロバート(フィリップ・シーモア・ホフマン)、ダニエル(マーク・イヴァニール)、レイチェル(キャサリン・キーナー)、ピーター(クリストファー・ウォーケン)の4人のメンバーは、25周年を祝っていました。
記念すべき年の演奏会の曲目は、「ベートーヴェン弦楽四重奏第14番」という難曲で、彼らはさっそく練習を開始します。
ところが、最年長のチェリスト・ピーターがパーキンソン病を患っていることが発覚し、引退を申し出ますが……。
フィリップ・シーモア・ホフマンとクリストファー・ウォーケンらアカデミー賞に輝く個性派俳優たちがベテラン音楽家に扮し、突然訪れた四重奏団解散の危機に直面する姿を見事に演じています。
ピーターの元で完璧な四角形だったはずなのに、彼の引退をきき、残されたメンバーは動揺します。
憤りや嫉妬、ライバル意識、家庭の問題など、それまでは、抑えられていた感情や葛藤があふれ出してくるのです。
弦楽四重奏団を守りたいため、新しいメンバーを入れることを提案するピーター。
これを機会に交代で第1ヴァイオリンを弾きたいと申し出るロバート。
「こんなときに」とロバートを非難する第1ヴァイオリンのダニエル。
ロバートの申し出に同意しない妻でヴィオラのレイチェル。
音楽一筋の独身男・ダニエルは、ロバートとレイチェルの娘・アレクサンドラと愛し合ってしまうし、ロバートは自分の味方をしてくれない妻へのあてつけで浮気するし、かつては、ダニエルと愛し合っていたレイチェルは、自分の気持ちがわからなくなるし。
25年もよく我慢して、やってきたなと思うほど、さまざまな問題があふれてきます。
狂っていく音程の中で演奏するというベートーヴェンの名曲「弦楽四重奏曲第14番」が彼らの今後を示唆していきます。
四重奏団を続けるのか?
解散するのか?
最後までわからず、悶々としてしまいます。
いわゆる完璧なハッピーエンドではありません。ラストはかなり、ビターで、きれいごとも語られません。
大変なことは一杯ある。だけど、それでも日々は続くし、生きていかなければいけない。
そう再認識させ、元気をくれる作品です。
(小泉 浩子)