魔法使いの弟子 - 前田有一

◆パロディ織り交ぜ笑わせるディズニー実写コメディ(65点)

 ハリウッドのエンターテイメント映画は、長年の積み重ねにより必勝の方程式ともいえる雛形を多数手に入れた。ワンパターンといわれようが、この雛形に毎年面白い映画を生み出す力があるのは確か。だが、そのフォーマットも、誰が装飾をほどこすかで面白さは大きく変わってくる。

 その意味でハリウッド最強のプロデューサー、ジェリー・ブラッカイマーとニコラス・ケイジ(本作の企画は彼の持ち込みだとか)の二人は、鉄板といってもいいコンビ。雛形いじくりの能力にかけては、とくにブラッカイマー(およびディズニー)はトップクラスの実績・実力の持ち主といえるだろう。

 ディズニーアニメの古典「ファンタジア」をモチーフに、現代を舞台にした魔法アクションに仕上げた本作は、彼らにとって得意のパターンといえそうだ。

 善なる魔法使いマーリンの弟子バルサザール(ニコラス・ケイジ)は、今は亡き師匠の後継者を1000年以上も探し続けていた。やがてついにその少年デイヴを見つけるが、すんでのところで敵の魔法使いに阻止される。10年後、再びその少年を探し当てたバルサザールだが、デイヴは物理オタクの大学生(ジェイ・バルシェル)へと成長していた。

 世界を滅ぼす最強の魔女の復活を目前にして、ニコラス・ケイジ師匠はなんとかこのオタク学生を一人前の魔法戦士に育てようとするが、なにぶん相手は気まぐれな現代っ子である。やっとこさ教えた初歩魔法も、この学生はろくなことに使おうとしない。

 そもそも世界を救うことなどより、幼馴染のかわいこちゃん(テリーサ・パーマー)の気を引くことが彼の今の最大の興味だ。1000年以上も年代ギャップがあるのだから、そもそもこの師弟関係、うまくいくはずがない。

 前半は、この二人のかみあわないやり取りで、たくさん笑わせてくれる。ジェイ・バルシェルは公開中の「ヒックとドラゴン」で、へたれな主人公の声を好演している若手俳優。ダメ青年タイプの役柄をやらせたら、現在彼の右に出るものはいない。オタクが学園一のアイドル(しかも幼馴染)と恋をする、日本エロゲ業界も真っ青の妄想ラブストーリーを演じるには最適な人物だ。

 魔女との最終対決までの間にも、その部下たちとの小競り合いが適度に挿入され、飽きることはない。ディズニー的なものをおちょくるパロディ映画の側面もあるので、大人のファンも楽しめる。

 とくに笑えるのが、カーチェイスになると乗ってる車をフェラーリやメルセデスに魔法で変身させてしまうシーン。そんな魔力があるなら、敵のクルマを座敷猫にでも変えちまえよと誰もが思う瞬間である。

 だが彼らはそんな無粋なことはしない。ニコラスさんも敵の魔法使いも、結局のところ画面を派手にしてお客さんを喜ばせること以外は考えていない。見上げたサービス精神である。

 そんなハイテンションを盛り下げるのが、魔女を演じる「イタリアの宝石」ことモニカ・ベルッチ。この無表情な女優は、他の俳優のやりすぎなまでの情熱的演技からひとり浮きまくり、観客たちを萎えさせる。少しは回りにあわせる事も学んでほしい。

 上手いなと思わせるのは、幼馴染を単なる足手まといにしなかった終盤の展開。主人公が誰かを好きになると、その後そのヒロインは足を引っ張るだけの役回りになるケースがよく見られるが、これは観客のイライラをつのらせる。

 本作はうまいことそれを回避し、同時に1000年前には無かったある「武器」で古の魔女と戦うなど、クライマックスの盛り上げ方が上手い。ニコラス・ケイジの、共感を集める「愛の演技」には、思わず涙も出てしまう。

 かように器用さをみせつけるブラッカイマー印のアクション映画だが、そんな彼らでもミスをした。前述のカーチェイスシーンは、確かにすばらしいできばえだったが、撮影時に通行人を巻き込む事故を起こしてしまったという。こういう映画をノーテンキに楽しむためにも、その手の撮影事故だけは勘弁してほしい。

前田有一

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