飯と乙女 - 福本次郎

本能というべき食べたい衝動を原点に立ってみつめなおす姿勢が好ましい。(点数 50点)

人はなぜ食べるのか、なぜ食べないといけないのか。飢餓から解放さ
れた21世紀の東京において“生きるため”という答えに意味はない。
調理する者、食事を拒む者、幸せそうに食べる者、一度呑み込んだモ
ノを吐きだす者、映画は3組の男女の「食」にまつわるスケッチを元に、
人と食べ物の関わりを描こうとする。原始より、人間は食べ物を巡っ
て争い、胃袋を満たして命の喜びを感じてきた。その本能というべき
食べたい衝動を原点に立ってみつめなおす姿勢が好ましい。

OLの美江はグータラな同棲相手と妊娠から来るストレスで過食に走っ
てはトイレで戻している。ダイニングバーでコックをしている砂織は
料理に口を付けない常連客・九条にカツサンドを渡す。美江の勤め先
の社長・小中は会社の経営不振がもとで食事がのどを通らなくなる。

砂織が腕によりをかけた見た目も鮮やかな料理の数々と小中の妻が食
卓に並べる豪快な大皿料理、一方でおかきばかりほおばる美江と食材
を加熱しただけで口に入れる九条。栄養を摂るばかりでなく、彩りや
香り・歯ごたえまで楽しもうとする砂織や小中の妻子と、食べること
自体を忌避しているような九条と美江と小中。

結局、美味しい食事は、同じものを一緒に味わえる家族や友人がいて
はじめて成り立つ。それを楽しめない九条たちは孤独だ。テーブルを
囲んで舌鼓を打つのは楽しい人間関係の基本。そして濃密なコミュニ
ケーションは食べることから始まると示唆するラストがすばらしい。

福本次郎

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