食堂かたつむり - 福本次郎

◆家出をし、コックとして修業を積み、恋人と信じた男に全財産を持ち逃げされ声を失ったヒロインの半生を手短に紹介するイントロ部分は、魔法の国の扉を開けるような不思議なメロディに乗せた歌と簡潔な映像でテンポよく語られる。(30点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 家出をし、コックとして修業を積み、恋人と信じた男に全財産を持ち逃げされ声を失った女は、たった一つ残されたおばあちゃんのぬか床を手に故郷の村に帰る。ヒロインの半生を手短に紹介するイントロ部分は、魔法の国の扉を開けるようなメロディに乗せた歌と簡潔な映像でテンポよく語られる。これからどんなおとぎ話が展開するのかと期待はふくらむが、ブタを飼う母親が出てくるあたりで急速にしぼんでしまう。そして癖のある他の登場人物は、その存在が不思議というより不自然でまったく物語になじんでいない。もともとスカスカな内容の原作は映画化でいっそう隙間風を吹かせてしまった。

 失意のうちに実家に帰った倫子は、離れを改装して食堂を始める。倫子の供する料理を口にした客はなぜか願い事が叶い、その評判は広がっていく。しかし、中学時代の同級生に振舞ったサンドイッチに虫が混入し、客足が遠のいてしまう。

 おっぱい山を眺めている倫子に熊さんというおっさんが声をかけるが、倫子との比較から彼は身長が優に2メートルを超えている。だが、話が進むにつれおそらく 180センチ前後の普通の高さに縮んでいる。これは倫子が小さいころに背の高い熊さんに対して持っていた印象なのか。その熊さんが倫子の最初の客となり、小さなテーブルでカレーに舌鼓を打つが、いくら美味でも、ぽつんとひとり放置されたような状況では落ち着いて味わえないだろう。その後、お妾さんと呼ばれる老婆も多国籍フルコースをふるまわれるが、彼女もひとり。「孤食の時代」といわれるが、おいしいと感じた気持ちを誰かと分かち合えない晩さんなど味気ないと思うが。

 やがて母親は末期ガンを告知され、彼女の主治医が初恋の男だったという恐るべき設定の後、ふたりは結婚する。披露宴の主食は母の愛豚肉を調理した世界各国の名物で、なぜか虫混入騒動の張本人の女が出席している。なんなんだ、この人間関係は。さらに倫子の空想の中で母と医師がブタの背中に乗って空を飛ぶ。ところがいつの間にか医師は消えて代わりに倫子がブタにまたがっている。もしかしてハチャメチャな妄想にツッコミを入れることを楽しむ映画だったのだろうか。。。

福本次郎

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