◆J・ロバーツのエキゾチックでモラトリアムな世界漫遊録(60点)
ここしばらく「子育て中心モード」を取っていたジュリア・ロバーツが久々の単独主演。自分を見つめ直す旅に出た傷心の女性ジャーナリストを、異国情緒あふれる多彩なロケーションの中で演じている。原作は全世界で700万部を売り上げたエリザベス・ギルバートの自伝的小説だ。
ニューヨークで一見、公私ともに充実した暮らしを送っていたエリザベス(ロバーツ)は、結婚8年目にして夫のスティーブン(ビリー・クラダップ)との離婚を決意。年下のデイヴィッド(ジェームズ・フランコ)との熱烈な交際も結局はうまくいかず、1年間、仕事を休んで、自分を解き放つ旅に出る。それはイタリアで食べ、インドで祈り、バリ島で瞑想をするはずの旅だったが……。
大輪の花のようなロバーツの魅力は四十代に入った今も健在。その華やかなオーラを目にすれば、ヒロインがいとも簡単に旅先で友達を作るのも、そう不自然には感じない。泥沼の離婚訴訟で疲弊したエリザベスに、イタリアで出会う男たちは「何もしない歓び」を教え、インドで出会うテキサス男(リチャード・ジェンキンス)は執着を忘れることを説き、バリ島で出会うブラジル男(ハビエル・バルデム)は新たな愛を運ぶ。だがヒロインもまた、触れあう人々の心に、何かを残して次の地に旅立つのだ。
とはいえ「何となく満たされないから離婚します。ついでに食べて、祈って、恋をしてきます」という三十代のヒロインに、全面的に感情移入できないのもまた事実。バブル期ならいざ知らず、仕事にあぶれた人があふれる昨今では、エリザベスの決断に疑問や反感を覚える向きも多かろう。「人は平凡な人生の中で、もがきながら生きるもの。満たされないからと言ってチェックアウトしたりしない」というヒロインの親友(ヴィオラ・デイヴィス)の言葉は、おそらくエリザベスのどのセリフよりも強く私たちの共感を誘うのだ。
(町田敦夫)