スウェーデンの偉大な監督が生んだ名作の一本 (点数 85点)
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スウェーデンが生んだ愛すべきもの、それは車VOLVO(笑) とベルイマン監督です。
ハリウッド外映画の三大巨匠といえば、黒澤明、イタリアのフェリーニ、そしてスウェーデンのベルイマンでしょう。そのベルイマンの脂ののった時期の3作品がリバイバル公開されます。
今回ご紹介する『野いちご』を挟んで『第七の封印』、『処女の泉』が連続公開されます。
ファンの方は全て観ませんか?『夏の夜は三たび微笑む』も機会があればオススメの逸品です。
さて、『野いちご』は、人生の終わりにさしかかって旅をする老医師の一日を通じて、人間の老いから生の苦悩、家族をテーマに、夢や追想を織り交ぜて描いた本作は、青春時代の失恋の思い出を野いちごに託した叙情的な一編で前作『第七の封印』で色濃く描いた神の存在についてはまったく無視した印象。
女性を描く名手であるベルイマンのミューズ、ビビ・アンデショーンとイングリッド・チューリンが艶やかに共演しています。
人生の豊かさとやさしさに満ちあふれた本作は、初めて彼の映画をご覧になる方におすすめです。
主人公イサク医師は、名誉博士号授与前夜、自分が死んだ夢をます。
そんな時、彼は息子夫婦と車でルンドン市へ向かう途中、青年時代過ごした旧邸へ立ち寄った彼は草原の野いちごを見て、婚約者のサラを弟に奪われた過去を思い出します。サラをあきらめ結婚した女は浮気者で彼は女性不信に陥っていました。
邸をあとにし、車にヒッチハイカーをのせた3組の一人がサラにそっくり(二役)で、過去を振り返り自身の青春を悔やみます。次の同乗者は衝突しそうになった対向車の夫婦で、人前もはばからずに口喧嘩ばかり……。
不愉快極まりないこの夫婦はゲットアウトにします。
しかしその夫はイサクの夢に現れ、人生の無意味さをあばきたてるのです。
夢なのに本気にするイサクは次第に他人に心を開くようになるのです。
そしてイサクはマリアンヌの悩みを理解したある時、車はルンドンに着き豪華な式典に参加します。
映画は、過去と現在・夢と現実が複雑に絡みながら織り成される「人生」をそのものを語る物語となっています。
人間と神の存在をテーマに多く撮ってきたベルイマンが「神の不在」をテーマにしたのかもしれません。
■1957年 スウェーデン映画/上映時間:91分/監督:イングマール・ベルイマン/出演:ヴィクトル・シュトレム、イングリット・チューリン、グンナール・ビョンストランド、ビビ・アンデショーン、マックス・フォン・シドー ほか
オフィシャルサイト:http://www.bergman.jp/3/
(中野 豊)