運命のボタン - 渡まち子

◆懸命に幸福を求めてもがくノーマを演じるキャメロン・ディアスが、いつもの明るいキャクターとは違って本格的な演技をみせて素晴らしい(65点)

 傑作短編を大胆に膨らませたSF不条理劇。ある朝、ノーマとアーサー夫妻の元に、赤いボタンの付いた不思議な装置が送られてくる。夕方、謎めいた男スチュワード氏がノーマを訪ね驚くべき提案を持ちかける。「このボタンを押せばあなたに100万ドル(1億円)を差し上げます。ただし世界のどこかで見知らぬ人がひとり死にますが」。期限は24時間で他言すれば取引は無効。夫妻は怪しみ、道徳的ジレンマに悩むが、結局ボタンを押してしまう…。

 卓越したアイデアと巧みなストーリーテリングで知られるリチャード・マシスンは「激突!」の脚本や「アイ・アム・レジェンド」の原作者として知られる作家だ。原作は、文庫本にして20ページ未満のショート・ショート・ストーリーである。ボタンを押せば大金が…という部分は同じだが、原作では、皮肉だが極めて分かり易いオチが付くのに対し、映画の方は、1970年代の宇宙開発計画を背景に、SFダーク・ファンタジーの趣になった。大金か、見知らぬ誰かの死か。この究極の選択は、目の前に大金を見せられた、生活苦を抱える若い夫婦にはパンドラの箱だった。そこから起こる尋常ではない出来事はあっけにとられるが、スーパーナチュラルなムードの映像は不思議と魅力的で、恐ろしい展開なのに恍惚感を誘う。特筆なのは登場人物に共通の概念“欠落”が見られることだ。ボタンのついた箱を持ってくる男の顔は半分がえぐれているし、ノーマは少女の頃の事故で片足の指がない。さらには、宇宙飛行士になる道が絶たれたのに夢を追い続ける夫のアーサーには生活力がない。そんな欠損はやがて彼らの息子のウォルターからもあるものを奪うことに。怪しく切ない展開は、怪作「ドニー・ダーコ」を思わせる不条理が炸裂するものだ。人類滅亡さえ思わせる大掛かりな展開はアブノーマルなのだが、人間の本質と、倫理観を問うテーマは、意外にも古典的だったりする。何かをあきらめているような、それでいて懸命に幸福を求めてもがくノーマを演じるキャメロン・ディアスが、いつもの明るいキャクターとは違って本格的な演技をみせて素晴らしい。

渡まち子

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