近距離恋愛 - 町田敦夫

◆パトリック・デンプシーの持ち味が生きる上々のデートムービー(60点)

 「男女の友情は成立するのか」なんてことを中学生時代にまじめに討論した人は少なくないと思うが、大人になった今聞かれれば答えは簡単、イエスで、ノーだ。確かに友情が成立するケースもあるけれど、それはあくまで恋愛対象にならない(または恋愛対象にできない)相手との間で代用品的に成立させるもの。要するに恋愛の方が友情よりも上位概念なんですね。

 ハンナと十年来の友情を温めてきたトムも、彼女への恋愛感情に気づいた時、友情という名の“代用品”では満足できなくなる。日頃のカサノバ生活を切り上げ、ハンナと身を固めようと決意したその時、皮肉にも彼女は別の男と婚約し、あろうことかトムに花嫁付添人(普通は女友達が務める役回りだ)を依頼する……。

 ハンナに心変わりさせようと奮戦するも、彼女が連れてきた婚約者コリンには何をやってもかなわないトムのカッコ悪さが笑わせる。いまいち大人になりきれないこのプレーボーイを演じるのは、TVドラマ『グレイズ・アナトミー』で遅咲きの花を咲かせたパトリック・デンプシー。四十路の彼に30歳前後と推定される役を振ったのは若干無理があるけれど、その無闇に甘ったるい笑顔は確かにトム役に打ってつけだ。ハンナ役のミシェル・モナハンは、クセのない持ち味で多くの女性客の感情移入を引き受ける。

 計算された紆余曲折で盛り上げて、最後は落とすべきところにストンと落とす、上々のデートムービーである。

 ところで本作が『ベスト・フレンズ・ウェディング』(97)の鏡像になっているのは、映画ファンなら誰もが気づくところ。あちらではジュリア・ロバーツが“旧友”のダーモット・マローニーをキャメロン・ディアスから取り戻そうと、あの手この手を繰り出した。

 同作のほろ苦いエンディングが好きだった筆者には、『近距離恋愛』の予定調和はいささか物足りないのだが、それは言っても詮無いところか。だってハンナが大金持ちで貴族のコリンを捨てるのは許されても、マローニーが可憐で音痴なディアスを捨てたりしたら観る方は気持ちよく帰れないもんね。男女同権の進む世の中だけど、やっぱり違いは厳然としてあるわけで。

 もうひとつ言えるのは、ジュリア・ロバーツを観にいった男性客はマローニーに感情移入するわけではないから、2人の恋が実らなくても何ら痛痒は感じないということ。それに対し、デンプシーを観にいった女性客はモナハンに我が身を重ねるから、ハンナが(あるいは自分が)トムと結ばれるのを請い願う。劇中にはトムに捨てられた元カノもわんさと出てくるのだが、女性客にはなぜか彼女たちが目に入らない。女性の心理って、ほんと不思議ですね。

町田敦夫

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