◆シリアスに思えるが、中身は確信犯的にユルユルな物語(55点)
日本映画の興収記録を塗り替えてきたシリーズの7年ぶりの最新作は、過去の登場人物総出演の趣で、まるで同窓会か歌舞伎の顔見世興行のようだ。湾岸署を襲った連続殺人事件から7年が経ち、青島刑事は強行犯係係長に昇進、新湾岸署への引越しを一任される。だが、引っ越しの真っ最中に、湾岸署管内で、金庫破りやバスジャック、さらには青島らの拳銃が3丁が盗まれるという事件が次々に発生。特別捜査本部が設置され、管理補佐官の鳥飼とともに青島たちは捜査を開始するが、ついに新・湾岸署が占拠されてしまう…。
高度なセキュリティシステムが導入された要塞のような建物が占拠され、中には爆弾が仕掛けられている。こうくると、シリアスに思えるが、中身は確信犯的にユルユルな物語だ。拳銃が盗まれ、マニュアルがすり替えられ、新人にはやる気が薄い。日本の治安維持を本気で心配したくなるのだが、それにしてもまぁ、湾岸署のセキュリティときたら何と情けないものか。しかも今回はとってつけたような “難病”ネタまであって、途中からどうでもいいや…と投げやりな気持ちになった。過去に登場したあの頭脳犯が重要すぎる役で登場して物語を転がしていくのだが、その犯罪の手口もなんだが情にからんだ作戦でおそまつだ。ただ、本作の目玉であるキャラで、小栗旬が演じる、本店(警視庁)と支店(所轄)を結ぶ管理補佐官という役どころは興味深い。上層部と現場の思惑の違いがこのシリーズの面白いところ。両方の顔を立てながら事を思うように運ぶ、この頭脳派の役をもっと掘り下げれば、警察ものとして新しいスタンスが生まれたかもしれない。それから、故いかりや長介が演じた和久さんの思いが、甥の登場という形を借りて復活しているのはちょっとホロリとした。名セリフを生むのがこのシリーズのお約束だが、今回のそれは「俺には部下はいない。いるのは仲間だけだ」がそうなのだろう。
(渡まち子)