蘇りの血 - 福本次郎

◆呪術と迷信が混在する世界では一度死んでもこの世に戻ってこられる。緑濃い森、煌々と闇を照らす月、満天にきらめく星……人と自然、魂と精霊が共存できた太古の昔、人間が人間として生きていくために必要なものは何かを問う。(40点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 呪術と迷信が混在する世界では生と死の境は明確に定義されておらず、一度死んでもこの世に戻ってくることができる。緑濃い森、煌々と闇を照らす月、満天にきらめく星……人と自然、魂と精霊が共存できた太古の昔、人間が人間として生きていくために必要なものは何かを問う。何者にも束縛されない自由と命がけで守るべき愛、結ばれない運命の男と女がひとときの安らぎを求めて彷徨する。しかし、その過程は冒険活劇の興奮も純愛物語のカタルシスにも乏しく、ドラムを多用した音楽の激しさとしっとりと落ち着いた映像のミスマッチが見る者の興味をつなぐ。

 大王の性病治療のために要塞に招かれた按摩のオグリは、留まるように請われるが、断ったために殺される。黄泉の門番にこの世に戻ることを希望すると不具の体で戻され、大王の侍女・テルテがオグリの体を「蘇りの泉」に運ぼうとする。

 強大な権力を握り部下の殺生与奪の権を握る大王は、不摂生がたたり健康を害している。なんでも思いのままに動かせるのに、自分の体は言うことをきかない。一方のオグリは按摩の技を頼りに気ままな生き方を続けようとする。大王の病気が治ると夜伽をさせられる予定のテルテの心をオグリは一瞬で見抜き、この要塞から出よと勧める。テルテはどこか他のところから連れて来られたのだろうか、彼女の身の上がわかるエピソードがあればオグリを助け蘇らせようとする気持ちもわかるのだが、彼女の動機は理解できない。

 やがて2人は大王に追い付かれ、テルテは大王の刃に倒れる。オグリはなんとか「蘇りの泉」にたどりついて健康な体を取り戻す。その泉で大王に対する感情を爆発させるが、オグリが水面をたたき咆哮する映像をくどいほど見せ音楽で彼の怒りを表わす。自分だけではなく罪なきテルテの命まで奪った大王への憎悪と憤怒、映画はこのシーンがいちばんの見せ場のような盛り上がりを見せるが、まったくの独りよがり。まあ、あらゆる表現方法がアングラ小劇場のようで、息の詰まる熱気は伝わってきたが。。。

福本次郎

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